「立読み」の概念整理
日国を引くと「立ったままで読むこと。特に、書店の店頭の本を買わないで立って読むこと」とあり、1946年の用例が示されている。
同じ漢字表記で「たてよみ」という語も立項されており、こちらは「名調子で読むこと。調子をつけて、よどみなく読むこと」と語釈され、『西洋道中膝栗毛』(1874〜76)の「潮花が三国志は両国の講釈場で立読(タテヨミ)を聞て」という用例が挙げられている。
我々が追及したいのは、立ったまま読むという姿勢や、立て板に水風に読みあげるという読み上げ方ではない、となれば「本来売り物の店頭の本を、買わないで読む」という事について調べてゆく、ということになる。つまりここでは、1)売り物としての書籍/雑誌など、2)代価を払わない/払えない、3)必要十分だけ享受する、といった3要件を満たす行為のことを「立読み」としたい。図書館で立読みをしても「立読み」にはならないのである。あるいは書店で「パラ見」――パラりと数ページを開けてながめること――をしても立読みにならないというべきか。
「写メ」――これは携帯機器で写真を撮ること一般という意味に拡張されたが――で店頭の雑誌の必要箇所をメモすることは、現行著作権法など法的には合法なのだが、書店側がこれを「情報万引き」と呼んで忌み嫌ったのは1990年代だったろうか。これはその記述量の少なさにもかかわらず上記3)を満たしてしまうためだろう。
立読みの表現形
立読、立読み、立ち読み、たちよみ、などなど形式的な表現形はあれど、ここで問題なのは異なる意味からなる類似ないし同義の表現である。
たとえば「只読み」。ただで読むから。
あるいは「盗み読み」。これは本来、隠れて読むことなのだが、売り手から見て、情報代を盗まれていると思えるからだろう。
類義語に「立見」もある。これは歌舞伎用語。