現代思想の図書館特集、ウラ主題は、英国式を前川御大が日本化した貸出至上主義(貸出の上にしか何もやってはいけない【ピラミッドモデル】)の否定と、米国式【パルテノンモデル】(調べ物、附帯施設とかも貸出と同時並行で十分やる)の復活だと思ふた。
そのからみで新出氏が千代田図書館改革を成功させた柳与志夫の著書―ありゃあ、ふつをテコに、昨今の図書館改革はまさしく「ジェントリフィケーション」にあたり、貧者を排除してよろしくないと立論していた。
個人的には貧者は助けられるべきだらうけれど、図書館が率先して、といふのがよくわからぬ。ルンペンプロレタリアートがゐるとして、別に図書館を作ってそこに収容する必要など全くなくて、ちゃんとした福祉施設やパチンコ屋などで楽しく暮らしてもらふ、パチンコの参考図書が必要なら、図書館から派出文庫をパチンコ屋に巡回させればよいように思ふ。なんでもかんでも図書館で本を読ませる、というのは図書館帝国主義のきらいがあるのではなからうか。
それに以前、米国図書館史の翻訳本を読んで、善良で有能な米国司書たちが何度も何度もライブラリーエクステンションを展開したのに、結局図書館は中産階級のものでしかなかった、という記述にあたり「あの米国にしてさうかぁ。実力十分の一以下の日本ではとても」と思ふたことぢゃった。
そんな思ひから、めづらしく真面目にやりとりしたのを録してをく。
こんばんは
— 書物蔵:古本オモシロガリズム (@shomotsubugyo) 2018年12月5日
調べ物をしたり主体的に公に関わったりするのは、中産階級的な行いだろうと私は思うのです。
ですから知識うんぬんの公共図書館を志向すれば、ジェントリ化するのは自然かと。ボストン・アセニアムみたいなもの。
もちろん逆に、社会的包摂方向も19世紀英国型でアリとは思いますが。
2000年代の段階で、千代田的な改革は必要だったと思います。
— 書物蔵:古本オモシロガリズム (@shomotsubugyo) 2018年12月5日
あと1980年代の荒川区の公共図書館がひどい状態だったのを普通の図書館に戻したのは、野宿者支援団体には不況だったのでしょうけれど、現場としてはやむをえない仕儀だったのでは。
これについては後から学会で事例報告が社会的包摂の観点からなされた際、現場の図書館員だった人が会場からいろいろ言ったという話を聞きました。
— 書物蔵:古本オモシロガリズム (@shomotsubugyo) 2018年12月5日
ここいらへんは貴兄と価値観が不一致のところかしら。
貴兄は十分現場をお持ちのようですから、それなりの覚悟をお持ちで言っているとは思いますが、実際に臭気で対応者の鼻がまがっちゃうような人たちを導いたり、女性職員にからむおじさまを阻止したり、そういった事態を改善できるような枠組みを作れるような論理や論争が必要かと思います。
— 書物蔵:古本オモシロガリズム (@shomotsubugyo) 2018年12月5日
ちなみに1 郷紳とhomeless
ジェントリ化、ってーのは、どうやら、再編成して、「郷紳」向けに、つまり小綺麗に中産階級化しちゃふことをいふ英語らすぃ〜 基本的には非難のことばしい
ちなみにホームレス問題は以前、真面目に考えたことがあって、米国でクライマー事件というのがあり、結局のところホームレスも小ぎれいな中産階級も、同じ権利を図書館において持つことが確認されたとか。してみれば、同じ住民としてホームレスが同格の住民に困る部分(具体的には臭気)をどうするか、といった具体的な解決法を制度化・施設化することが必要だなぁと思ふ。
ただこれは図書館にホームレス用のシャワー室を設置し、それを議会で議員に認めさせるといふ荒技が必要なんで。果たして通るか。
職員用のシャワーを裏で使わせるという形式だと広がりが持てないし。
ちなみに2 ピラミッドモデルとパルテノンモデル
これはウラ主人公の柳氏の造語。ただし、前川御大自身が『貸出し』(1982)のp.16図1-2でそう解釈できる図を示している。
まづは貸出しに特化して図書館の浸透を図るという戦術だった。パルテノンみたいに、イベント、レファ、貸出し、集会、席貸しなど同時並行でやるのが米国でのフツーのモデル。ゆゑに1950年(日本)図書館法でもサービス内容はそういったことが列挙されている。戦後、米国式でやろうとして浸透せず、英国式を日本化した前川式で大成功した、という経緯がある。