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古本オモシロガリズム

現代思想2018年12月号 特集=図書館の未来 の感想(各論)

このまえの総論の続きね(o^ー')b
総論感想のほうにフェイスブックからさかんにリンクがはられ―どうやらフェイスブックに著者たちがゐるらしい―「万機公論に決すべし」と思ふとるわちき的には、あまり気が進まんのぢゃが、それを気にして出さぬといふのも腹ふくるるわざなれバ、書きつくる也。
商売も学界も関係ない自由の天地が言論空間と思ふがゆゑに。
現代思想2018年12月号 特集=図書館の未来
http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3237

各論の感想

岡本真【インタビュー】「私は、時に図書館の世界では革新的な立場だえると捉えられますが」へー(・o・;) 『市民の図書館』よりCIEを「思想の原点」とするとあるのは、端的に言ってイギリス式公共図書館でなくアメリカ式を重んじる、ということかしら。
猪谷千香+鎌倉幸子【討議】無料貸本屋批判がある理由に学校教育で批判的読書を教えてこなかったとする。してみるとアメリカ式に比重かな。  
公共図書館の実験】
嶋田学論文:貸出し主義は教育or文化という目的を意図的に排していたことが重要(欠点)だったんだな、と別の勉強会と同じ指摘だなあと。
新出論文:千代田のジェントリフィケーション批判。これは罵倒語なれど、むしろ今までの貸出主義の是正には必要と(私は)思う。
高橋真太郎論文:調べ物、レファを中心とした「附帯施設」のすすめ。特に県立の場合。
小川直人報告:仙台メディアテーク、運営方針などをめぐるドッタンバッタンが正直に書かれていて参考になる。
鈴木一誌随筆:NYPLの「附帯施設」にあたることがらが活写。やっぱり附帯施設論争(1933)もういちどやるべきと判る。
学校図書館の行方】
川崎安子報告:女子大の大学図書館ならではの新「附帯施設」。特に着替え室がナルホド。
岡友美子報告:ツタヤ的なものの必要性。
中村覚報告:デジアカの工学的概説。データ読み解きに社会人参加を提案。
今井福司論文:学校図書館が学校史などのアーカイブになったらと提案。
【切り絵】鷲津影織 ポエムがあってもよかったかも。
【ささえあう空間】
呑海沙織報告:英国の認知症者サービス。必要なれど実際に日本でやるのは大変。
鎌倉幸子報告:古本は古着同様、救援物資になりづらい件。
【歴史・未来・人】
長尾宗典論文:福島氏指摘同様、記述範囲が長すぎるなぁ。
高野明彦報告:高野先生、千代田改革と共に。ジェントリフィケーション批判同様、ウラ主人公としての柳与志夫。
福島幸宏論文:じつはこれがいちばん見通しよかった。

こうしてみると…

こうして一覧してみると、公共図書館の―大学、研究、学校図書館もこの特集内では公共性を問はれてゐる―英国(社会的包摂)型と、米国(有産市民書斎)型の度合いが、書いた人達の個々の思ひとは別次元でとはれてしまっているなぁと。
もちろん、1970年代「市民の図書館」に書かれた、まづハ英国型で、という貸出し運営がいきづまったことが背景にあるだろうけれど、そこいらへんはこの特集ではっきり書かれてをらんので『公共図書館の冒険』(みすず書房、2018)を読んで認識するのもよろしかろ(´・ω・)ノ