書物蔵

古本オモシロガリズム

ねこやさん

古本ねこや:代表者氏名/前川芳之 屋号/ねこや

www5d.biglobe.ne.jp/~furuneko/furu4.htm
 2003年9月28日              上野文庫さんのこと
 先日の24日は神田一新会の大市に出かけた。四つのフロアーを満杯にする程の出品があり、品物も結構面白かった。何階だったか忘れたが戦後のカストリ雑誌や落語、児童読物が陳列されているフロアーに入り品物を見ていると聞き覚えのある咳払いがする、顔を上げ見回すとやはりSさんだった、多分Sさん自身はその癖に気付いていないと思われるがフロア全体に響きわたる「ウッヘッン」、なかなか際立って力強い。Sさんは黒っぽい芸能、スポーツ、面白本を扱う業者として知られている。今から10年程前、御徒町に上野文庫さんがオープンして数ヵ月後拾ったチラシでその店を知り、一週間通い続け上野さんがせっせと集めてきた本を買い漁る。こうして二人の交友は始まった。上野さんのこの業界への登場は様々なメディアも手伝い派手で衝撃を与えた。取り扱い分野も「史・誌・録・芸」と明確に打ち出し、新たなる商品に命を吹き込み付加価値を与えた。八切止夫竹中労、戦後風俗、ヤクザ関連グッズ・・・等々、上野さんの出現で甦ったものも多い。関東地方での古書即売はもちろんのこと、地方のデパート展、即売会へも毎回出没し、開催日が重なる時は飛行機を駆使して全国を駆け巡った。いつだったか恒例の早稲田の穴八幡古書即売会には雨天にもかかわらず一番乗りする様子がテレビに映っていた、その後も何度も即売会で本を漁る上野さんの姿を見かけた。古本屋を訪ねる全国行脚で国内の古本屋は大方巡ったのではないか、うちにも何年か前師弟筋の人を伴って見え、何冊か買ってもらったことがある、「上様」の領収書を所望されたが先刻その御尊顔は承知していたので思わず「上野文庫様」と書きそうになるが、野球帽を深くかぶった様子から「お忍び」と判断し言われるままにした。後日、上野さんから紹介されたという都内からのお客様があった。
 今年の春、Sさんに連れられ初めて上野さんと一緒に喫茶店に行った。ネタの豊富なこととそのサービス精神も手伝って上野さん独りが喋っていた、私とは初対面ということになっていたがなぜかチラリと開高のことを話された。