書物蔵

古本オモシロガリズム

蔵書印DBのある事例につき疑問:「福堂聚笑」か「笑堂福聚」

『伊計村遊草』という漢詩集。これは蔡大鼎(さいたいてい)てふ沖縄人が書いたもの。
明治大正期に本土に渡ってきたらすぃーてふことは次の文献で読んだ(´・ω・)ノ
・蔡大鼎『「伊計村遊草」研究成果報告書』うるま市112-115ページ
んで、「福堂文庫」なるハンコがあるといふ。
この福堂って何者と、ちと調べたが、わからんかったかはりに、ちょっと面白いことに気づいた。それは蔵書印データベースの、この印の読み方について。
蔵書印データベースにつぎの画像の蔵書印が登録されてゐた。

説明にかうある。「円形(中を十字で四つに割る)」
で、読みは、4文字をたすき掛けに読んで「笑堂福聚」。これは、かういったタイトルの本があるかららすぃーが。
・山本北山. 笑堂福聚. 享和4 [1804] 1冊 ;YD-古-5157 (マイクロフィルム)
しかし一方、「福堂文庫」の持ち主がこの印を捺したといふことであれば、国会図書館の古典籍係が読んでゐるやうに「福堂聚笑」と、右回りで読むべきなのであるまいか。
といふのも、次の和本が国会にあるといふ。
木村正辭 [編]. 萬葉集書目. [出版者不明], 慶應2 [1866] 序. 18丁;911.12031-Ki192
この書誌データ注記に次のようにある。
印記: 福堂文庫, 福堂聚笑, はまを.
さらに注記のよれば、弥富破摩雄旧蔵.とあるので、「はまを」は弥富, 破摩雄, 1878-1948 || ヤトミ, ハマオ の印で、なおかつ『人と蔵書と蔵書印』によれば、号は賓水で「賓水文庫」なる蔵書印も示されとるので「福堂文庫」はその前の持ち主、つまり別人による押印であると考えるほうがよいだろう。
さてこれはまえふりで。
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