書物蔵

古本オモシロガリズム

カナダの書誌学者は犬のメシを喰わされるのはイヤだといふ

ネット上でピックアップしていた人がいたので、ちと読んでみた。
英語は嫌いだなぁ。日本語のほうが好き(^-^;)

記録がなくなる! Record breaking
カナダ国立図書文書館長の近代化路線が専門職たちを混乱に。だが「自分は彼らのベストフレンドだ」という館長 Canada’s chief librarian and archivist is pushing a modernization project that has the profession in an uproar, but he thinks he’s the best friend they’ve got.
By Chris Cobb, Ottawa Citizen May 3, 2013
Read more: http://www.ottawacitizen.com/news/Record+breaking/8335572/story.html#ixzz2SQDCM4JJ

斜めよみしたところではこうなろうか。

LAC(カナダ国立図書文書館)の「現代化」を図る館長(ダニエル・キャロン)さんが、現場の専門職種やその論理を相手にせず、資料の電子化を進める一方、予算減少分を旧来のILL(現物の貸借)プログラムを止めたりといった紙資料サービスのカットにあてているという。
専門職側は、電子化に熱心なLCやBLだって紙資料の収集を止めたりしてないのに、LACは紙資料を放棄していると指摘。古書店なども、LACに自国の文化遺産を買ってほしいという。カナダ書誌協会長も、ILLの代わりにあてがわれている電子サービスは「犬のメシ」だと手厳しい。

「今までは「キャデラック」のようなサービスだったんです」と、LACの非デジタル部門の担当は言う。「けれど今、フォードになりました。多くの人々は、これが自転車になるのではと恐れているんです」

これらの非難に対して元経済学者で年齢不詳な(というのも取材者に館が館長の年齢をプライバシーだからと確答しないのだそうな)キャロン館長は誤解だという。
館長は、いまデジタル資料を保存しないと後世の国民が21世紀前半のことがわかんなくなっちゃう、だから、いま理解されなくてもほんとは仲良くできるはず、という。
他の英語圏の図書館や文書館はGoogleなど民間デジタル企業と協力して、紙資料とデジタルのバランスをとっているのに、というのが取材者の結論といえようか。

わちきの考え

館長は半分正しい。古本ずきなわちきなれど、目下のところの正しき途は、電子と紙を混合して使うことにありと判断しとる。だから、電子対応を目下の目標にすることは当面の政策として正しい。
だが、電子に純増予算がつかないからといって、紙資料から転用しまくるというのは戦略的に間違いと思う。というのも、進む電子化の中で館の組織としての優位のてこになるのは、相対的に希少となる紙資料だから。これは、「レファレンス・ライブラリアンの過去と未来 http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20091013/p2」でも論じたが。
もちろん、図書館文書館自体が社会に不要という考えならOK・OK。
それに、電子の最前線は営利企業や純増予算がほっといても付くよ。本質的に後ろ向きサービスの図書館文書館の予算内でやりくりすることではないと思う。記者がいうようにバランスをとってる国立図書館文書館はいくらでもほかにあるような。
これについては、先の大戦の機械化のアナロジーでよろしかろ、と思ふてをるのぢゃ。

感想のほうは

こーいったことがカナダで問題になるのがうらやましい。だって、日本で全然問題にならなんぢゃん(σ・∀・)σ
ってか、日本人がきちんと図書館サービスを使っていないからだろうなぁ。だってまったくおんなじ政策を国立図書館がとっているでしょ。まあ電子化予算を純増でとってきたのは素晴らしいし、発展途上の電子サービスをするのも結構だけれど、それで紙資料を見せないという政策。
けど世間的に問題にならないのはなぜか、ってのは全部記事に要素が(逆の形で)書いてあるよね。
きちんとしたユーザがいない、というかユーザが未組織。
専門職集団の不在(擬似ならある)。司書の半分はレファレンサーで、実は彼らはユーザの手先(エージェント)を果たしうるはずであったのだが。
書誌協会がない(正確にはあったものが内紛で無くなった)。一番コアに図書館を使ってきた連中であったはずなのだが。
じつは1980年代にいちどユーザが組織化されそうになったことがあるらしい。
というのも、当時は「(来館複写による)図書館破壊学入門」なる文章が職員によって書かれるほど国立図書館にコピー依頼が殺到していた。
そこで現場の連中らが開催したのは複写代行業者との懇談だったといふ。
ん?(・ω・。) いまの司書様方ならスグ気づくと思ふけど、かやうなるギョーシャは存在自体が著作権法違反。
けど現実には当時、たくさん存在したらしい。それで現場がその存在を前提としてサービス向上のためにヒヤリングをしたとかいふ。
しかし今の司書様方は無用に遵法恐怖が嵩じてをるから、そんなこと発想すらできんわなぁ(σ^〜^)σ
きちんとしたユーザ、つまり、本当にそこななけりゃあおまんまの食いあげ、ぐらいの、がいなければ批評や批判もでないわな。大学人は国立がダメでも大学図書館や図書室使えばなんとかなるから。
かくしてカナダの書誌協会長のいふ「犬のメシ」を喰わされるといふわけか。。。