書物蔵

古本オモシロガリズム

『兵庫の汽笛』と、寿岳文章の限定版部数論

空閑文庫で1200円で拾った古書目録をながめる。

  • 明治大正文献在庫書誌 : 文学を主とする. -- 万字屋書店, 1958

 これ、異なるタイトル「明治大正文学書目」が表紙と背文字にあるから、OPAC上で引きづらい。

限定本の部数 その概念規定

 序文を吉田精一寿岳文章が書いていて、吉田は「古書の蒐集の中でも、明治文学ものなどは、戦前は物の数に入らなかった」と、値段も価値も低かったことを述べている。寿岳は「限定本雑記」(p.2-3)と題して、限定版の部数と、一連番号について述べている。彼によれば次のようなる。
内容的に500部しか売れない本を50部に限定しても「「限定した」と大きな顔はできまい」そうな。「限定を意義づけるのは、個々の書物の、売れる可能性との一定の比率である。」というのは正しい。
 でも、一応の平均部数が設定できるし、日本でもそうすべきという。それは欧州の限定版部数だそうな。英仏で125部を中心として250部までなら限定版になるそうな。
 いいことも言っていて「出版とは、私的なものが公的なものに変質することを意味する。未知の購読者がなくては出版とはいえない。」と。

社内報の元祖が!

しかし、なんとこの販売目録には、『兵庫の汽笛』が販売されている(+o+)
これは日本で最初の「社内報」だといはれているもの。