書物蔵

古本オモシロガリズム

代謄寫(代謄写)について新資料

印刷物に刷り込まれた「ダイトウシャ」(といふのは便宜的な読みで、ほんたうは「とうしゃにかふ」と読む)について新資料。
昨日深夜、ログから拙ブログ関連語彙を検索していてびっくり(*ω*;)´´したのだが。

「昭和十四年・出版警察執務要(翻刻)」山形県警察特別高等警察課 国立公文書館
上記翻刻 http://www.geocities.jp/kafuka196402/si.html

これの本文がひっかかった。

第四章 視察取締
第一節 一般視察取締
 第一 出版警察上 視察取締ヲ爲スベキ對象概ネ左ノ如シ(以下略。
     印刷所を見廻れとか)
 第二 視察取締上 重要ナル出版物ノ發行所 發賣所 等ノ所在(など、
     事前に情報を得ておけ、とある。定期刊行物の場合は部数も)
 第三 視察取締ニ当タリテハ 地方ノ實情ヲ考察シ 夫々適宜ノ工夫ヲ
     凝ラシ(略、特に「不穏文書」の発見に郵便局と連絡をとれと)
 第四 無届 無納本ノ取締ニ付テハ凡ソ次ノ点ニ注意スルコト
  一、 講義用プリント 各種團体其ノ他ノ 議案 宣言書 報告等 多數
     頒布スルニ拘ラズ 特定人ニ頒布スルコトヲ理由トシテ届出納
     本ヲ爲サヾルモノヽ有無
  二、 出版法 第九條ノ簡易出版物ニ名ヲ藉リテ届出 納本ヲ爲サヾ
     ルモノヽ有無
  三、 「代謄寫」等ノ断書ヲ附シ 又ハ 非売品ナルコトヲ理由トシテ届
     出 納本ヲ爲サヾルモノヽ有無

  四、 發行日附ト納本日トノ関係ヲ巧ニ按配シ置キ法定ノ時期ニ於テ
     納本ヲ爲サヾリシモノヽ有無
 第五 出版法 第三十四條ノ處分ヲ受ケタル雜誌ニ付テハ處分後 一
     ヶ年間 嚴密ナル看視ヲ行ヒ處分ノ効果ヲ擧グルニ努ムルコト

上記でわちきが強調した部分がそれ。
いやサ、日本のnational archiveの電子化資料に、出版警察や出版統制がらみのものがあるのは気づいておったのだが(ex. 「雑誌一覧」昭和19年8月とか)。
でもそのものズバリ、出版警察のマニュアルがあるとは知らんかった(・∀・`;) ってか、今見たら、かの『出版警察報』(エロ本の一番のヤマバが引用されとるオモシロ月報ぢゃ)も、かなりの部分、もう見られるようになっとるね。
しかし、これでほぼ、「だいとうしゃ」の正体がわかりましたの。

分析

以印刷代謄写」が元の形であったが、昭和10年代には「代謄写」という短縮形が一般化していた。
代謄写という表示は、出版届(と同時にせねばならない納本)をしないための「断り書き」
代謄写ものは違法だが、見回りで調べておくのは、あくまでもその「有無」。

以印刷代謄写」まとめ(改定)