書物蔵

古本オモシロガリズム

史料批判

内務省が県警にアンケート(σ^〜^) 昭和8年

なにやら著作権騒動にまきこまれてた荻野富士夫先生の資料集にこんなん。

  • 共産主義関係出版物取締ニ関スル意見要旨 警保局図書課 1933年5月 謄写刷 国立国会図書館憲政資料室 松本学関係文書

極秘 昭和八年五月 と表紙にあり。巻頭に。

凡例
本篇ハ昭和八年四月一日内務省発警第三十二号通牒「警察部長会議諮問事項ニ関スル件」ニ対スル各庁府県当局ノ意見書ヲ取纏メタルモノニシテ意見書中大体類似ノ事項ハ其ノ間小異アルモ便宜上可成之ヲ一括掲記スルコトヽセリ。(中略)
一、共産主義関係出版物取締法制ノ整備運用ニ関スル件
ニ、共産主義関係出版物取締施設ノ改善拡充ニ関スル件
三、前二号ノ外共産主義関係出版物ニ関シ実施ヲ必要ト認ムル一般的対策ニ関スル件

要するに、左翼書の取締りについて、なにか意見があったらドーゾ、というアンケート集とみなしてよろしかろ。ここで重要なのは、ここに書いてあること、「何々スヘシ」というのは、やりたいけれど、できていない・できないことであるとゆー点である。
たとへば

三、発禁出版物ノ差押制度
(5)新聞雑誌ノ発行者ニ対シテ発行部数、送先等〓警察官ノ尋問ニ答フルノ義務ヲ負ハシムルノ規定ヲ設クルコト(山口)

とあるのは、山口県警察部から、そのような意見があったよ、ということなんだけど、逆に、部数について尋問に答える義務は(法制上)なかったということと、警察官が発行者から部数を聞きたいとつねづね思っていることがわかる。
またオモシロイのは、

ニ、出版物ノ検閲制度
(9) 出版物中ノ伏字等ヲ成ルベク少クスルコト (山梨)

というもの。これはフツーに読むと、内務省に対して出先の警察部が伏字の多い本を発禁にしてほしい、という要求のように読める。
俗説では、○○○が×××して、などという伏字は権力側がそうさせたぐらいの誤解があるが、むしろ権力側には伏字を少なくしたいという要望があったとゆーこと。
まあ、森さんがいうように、単に、伏字がおおくっちゃあ、読めないよー、と純粋に言っているのかもしれないが(゜〜゜ )

ローターオクセンで

城南展で森さんと会い、ひぐらしさんに寄った後、ふくろう店で、決して「うさくん」と同一作者でない人による「花のズボラ飯」の2巻が出ていたので買う。ついでに「悪の華(まんが)」も。
メシを喰いながら、上記、伏字の件の読みについて、マックス・ウェーバーの合理化論について、あと、友人の史料批判によるNDL不祥事読み解きに感動した件について語る。