書物蔵

古本オモシロガリズム

椀伏せを見る:最初で最後?

もう十年もまへになすかすら…(*゜-゜) 古書ライターの草分け紀田順一郎先生が、客寄せに「椀伏せ」をやるべし、と呼号していたのは…
けふは寝坊しちゃったんだけど、不図、

けふ椀伏せを見ずんば、また見る機会はないかも…

などと思ひて、觔斗雲にて駆けつける。

椀伏せとは

とりあえず、わんぶせ、とは競売、せりにおける入札方法の一種、とでも言うべきかすら。

わんぶせ 椀伏せ。市場の入札で、椀のフタの裏に落札値を書く方法
(『東京古書組合五十年史』)

入札するフダは、フツーは紙、ペーパァなんだけど、かはりに、お椀を使うのが珍しい。
あたかもよし、昨日、早稲田青空古本市にて入手せる、戦後唯一の骨董用語集を引きて、予習してをったので、スムーズに理解できた。
ってか、昨日、用語集の記述から想定できていたことが実証されたというところ(゜〜゜ )
椀伏せについては、『古本用語事典』にも立項されとるんだけれど、ちょっと記述があいまいなところがある。
その点、昨日600円で拾った『体験的骨董用語録』は、個人の見解もあるんだけど、事実の記述はしっかりしている。

会場

さて、着いたのは11:30ごろであった。地下の会場はokatake氏の記せるごとく、以前のアンダーグラウンドブックカフェ風そのもので古本が並んでいたが、中央に十畳ほどの畳敷きの台座が用意されており、それを観客が見るというふうであった。じつはこの畳敷きというのが、椀伏せには重要。
12:00に実演が始まる。
椀伏せを進めるのは西秋書房さん。全体司会はokatake氏、台座には神保町界隈の重鎮古書店主の方々が7名、いかにもという風で座る。どうやらその多くの方々は、実際に椀伏せを見たかやったことのある人々であるやう。ここではある人の表現を借りて中世都市堺の町衆と呼んでおこう。
椀伏せにつかう、椀(正確には、椀のフタのほう)は、なんとまあ古いものが残っていて、それを今回、使っていた。びっくりである。

椀伏せの手順

真ん中に「中座(なかざ)」役が座り、せりにかける品物、ここでは本をば参加者に見せ、タイトルなど最低限の情報を唱える。
そして品物はお盆に載せられて一座を廻る。これは、「盆廻し」だね。ってか、古本用語としては記述が見あたらず、『体験的…』のほうに、「マワシボン〔回し盆〕」として立項。回したのは奈良絵本とか、まぁいろいろ。
それから各自めいめいの価格を硯にはった墨汁に筆をつけて書き込んでいく。
これは最後に質問しようと思っていたのだが、予想どおり、漢数字で書き込んでいた(チラリと見えたのだ)。
ここではそれは材料にすぎなくて、見所は、椀(のフタ)を中座のとこへ、ホイッと放り投げるところ。
価格が書き込まれた椀のフタをば、まさしく投げて、着地させる御仁もをれば、(ここが重要なのだが)たたみのうへを伏せたまま滑らせて中座まで寄せる者もあり(だから、最初に畳が重要と書いた)。

なーるへそぉ…(・∀・)
椀が伏せられたまま移動してをる!`・ω・´)o
「椀伏せ」とは、まさしくこのこと…(*゜-゜)

と、みゃうに得心す(`・ω・´)
と、いふのも、今まで読んだ古本関係のものだと、椀のフタのほうを使い、椀の本体を使わないということが書いてないものがほとんどで。

椀(の本体)をそのまま投げれば、着地したとたんにゴロゴロ、あらぬ方向へ転がっていってしまふなぁ(*゜-゜)

あるいは、

椀(の本体)を伏せたままスライドさせても、重心が高くなるから、ちょっと突っかかっただけで、ひっくりかへってゴロゴロ、だなぁ(*゜-゜)

と、紀田先生の古本小説を読んだときからの長年の疑問だったのだ(^-^;)
やっぱり行ってよかったかも(*´д`)ノ