書物蔵

古本オモシロガリズム

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日本主義の観点から図書用語に再考をせまるわちき

神保町の二代目インタビューを読んでいたら、資料モノは次の2つに分けて考えられているという。

資料物
 一次資料(生資料) 秦川堂さんで扱っているようなもの
 二次資料(研究書、研究雑誌) 南海堂〃

ちなみに、『古本用語集』久源太郎(有精堂1989)では、「会社、官庁、団体等で刊行した図書・雑誌・パンフレット類で、通常の頒布ルートに乗らなかったもの(非売品)で資料価値に富む文献類(以下略)」とあり、これはおそらく「古本屋用語集」『東京古書組合五十年史』(1974 p.888f)をそのまま踏襲したものであろう。
インタビューのほうが、ちょうど二次資料のところが拡張しているのがわかる。
ちなみに原義(インタビューでいう一次資料)の概念は、図書館情報学でいう「灰色文献」に同じ。
ほんとうなら、古書業界語、書誌学用語、図書館情報学用語はもっとすり合わせをしてもいいように、日本主義図書館学の観点からはいえるのではあるまいか。ってか、戦後、一貫して米人の議論のひきうつしばかりしてきたから、学者先生は必要を感じないのだろーけど。

書名の読み

「難読と発声」もおもしろ。日本語(正しくは日本語表記)における固有名の読みがむずい話なんだけど、「古書界で難読書名に最も苦労するのは市場の「発声」ではないだろうか」と、明治古典会七夕会の発声をつとめた岩森書店(荻窪)店主の話がある。

書名の読みは徹底して調べ準備した。漢和辞典を人名辞書を携え、地図は忠敬堂、浮世絵は原書房など各々第一人者に尋ね、一誠堂の小ナギ氏に教わり、(略)厳格な反町氏に褒められた事は忘れられないという。

今は入札のやり方が変わり(廻し入札→置き入札)、若い人から読みを聞かれることはなくなったという。
さういえば、書名(および著者名)の読みにこだわった職種がもうひとつあり、それが図書館員だったわけだが…
べつに振り市をするわけではなく、カードを固有名の発音順(ローマ字あるいはカナ)で並べるためのものであった。むかしの司書はねこもしゃくしも、わかちがきやら、(字の)排列規則やらに気をつかったものだが… いまではわりと、どーでもいいものになりつつ…

戦争俳句

「その基本資料になるのが、当時刊行されていた改造社「俳句研究」誌である」という。戦争俳句とはオモシロそうである。大東亜図書館情報学短歌集を「発見」したわちきであってみれば、詩歌を資料的に読むということに、もっと注目されてよいだろうと思う。