書物蔵

古本オモシロガリズム

【ほうろう発】古本バス【現世行き】

きのふの日記のつづき。

古書現世の店内で、)友人が示したものは、なんの変哲もないヒラとじの略装本。
「なになに〜」というと、「これ面陳されてましたよ」と言ふ。

田口稔とな。
値段をみると、「15000」とあり。んー(・ω・。)、現世さんにしては高い。きょうび、一冊で万を超える本というのはよっぽどの本ではあるまいか。15000の下に漢数字で「一万五千円」とも併記されてたりもする(・∀・) 週末の古書展とかで1500円ぐらいでころがっていそーな…
けれど、奥付をみるとナールホド。

印刷康徳十年二月十五日・発行康徳十年二月廿日〔・〕著者大連市伏見町十四ノ廿六田口稔・発行者奉天大和区千代田通四〇号山中泰三郎・印刷者奉天鉄西区嘉工街三段一号新井長三郎・印刷所奉天鉄西区嘉工街三段一号・発行所奉天市千代田通四〇号吐風書房・配給元満洲書籍配給株式会社(定価弐円)

とあり。大連だとか奉天だとか満洲だとか、ようするに近年はやりの満洲モノであるのでそれなりの値段なわけだ。
あらためてパラパラを見ると、序文がついていて、自分は満州の地理や人物について随筆を書いて本も何冊かまとめたけれど、読書随筆をまとめたのがまだだったので、ここにまとめた、ぐらいのことが書いてある。「私の読書趣味」は、具体的には「読書・書斎・図書館・書店」だという。わちきの趣味にドンピシャではあるまい乎! わちきあての面陳かのやう(^-^;)

なんとまぁ、この本は昭和18年に大陸で出た仮性図書館本ということなわけである。

友人は、「この田口って、たしか満鉄の図書館のヒトでは」という。「きっと、あの『満州文化細目』って書誌に載ってますよ」とも。しかしまーAさんってばなんでも知っとるのー(*´д`)ノ とあきれつつ、んでは、帰って調べるべー、と思い、超大型連休の真っ最中に敢然と開店する古書現世さんへの喜捨のつもりでポンと万札をば。
ってか、京都の産業会館にいかぬ分の古本予算(新幹線代など)を充当するということで(^-^;)
いっしょに、おまけの名作 : カバヤ文庫物語 / 坪内稔典著. -- いんてる社, 1984 も買う。なんだかアマゾンでバカ値がついとるんだけど、1500円だったので(こっちは15000でなく1500ね(o^ー')b)。

かへって調べてみると…

日記としては、このあとつけ麺を喰ってハラいっぱいになり、高田馬場ブックオフをひやかした後、むかし和尚さんと待ち合わせしたことのあるルノアールにしけこみ、またもや数時間、話こみマターリとした古本日和が暮れていく… といふことになるのであるが、内容的にこの仮性図書館本のつづきを書き付くる
帰って、ちょっとへんてこな『満州文化細目』をひっくりかえすと友人のいふやうに、ありますた。著者に関しての情報はまるでなく、目次と梗概があるのみ。この本は、遼寧省図書館にある本をもとに書かれているとも。この「文化細目」は大陸に残された日本語図書コレクションから、コピー代を払いまくって情報をあつめた書誌なのでした。
んでは、どれくらい国内に残ってるのかなーと各種OPACを引いてみたらば…
国会なし、webcatなし、ゆにかねっとなし、
とゆーことで、どうやら現在国内ではすぐアクセスできる本はほぼないと言ってよいやう…(-∀-;)
びっくり。
あの昭和17年の『書病コウ』でさへ県立図書館を中心に、ゆにかに数件でてきたことを思へば、これはかなーりレアといってよいやう… む、むー、こんなレアな満洲本があきつさんとこに出たとすれば、これはもう15000では済まない… と、おそるおそる日本の古本屋を検索するも、みあたらずフゥ
とゆーことで、古書ほうろう前から都バスにとび乗って行った先で、トンデモめずらか満洲仮性図書館本を拾う、の巻、一巻の終わりでござる〜

追記(2009.5.7)

むかしは古本屋にあこがれた書物蔵なれば、国内唯一本だのと喜んでいるだけでなく、値踏みをせい、ってか。まずもって、古書現世さんは常にほぼ必ず相場より安い値段をつける、ということがある。あと、上記にひきあいにださせてもらったあきつさんは満洲モノに関しては、率先して高値をつけてきたという実績がある(もちろんそれはそれなりに良いことでもあるわけだけど…)。ということで、2万〜3万ぐらいなのかなあ相場は。もちろん、あきつさんなら5万ぐらいつけるのだろうけれど。ん、電脳せどりなら三倍の15万ってか。いやいや、Amazonの古書データは某所経由NDL書誌なわけだから、そもそも出品できませんわん(・∀・)