書物蔵

古本オモシロガリズム

奥付研究(つづき):検閲本と流布本の日付がズレること

ネットにあった奥付研究で重要なものをメモ。
文学史研究の一環として書誌学的アプローチをした人が、奥付に記載されている日付について論じている。著者は、巌谷小波(いわや・さざなみ)の『日本昔噺』シリーズの研究をしているんだけど、先行研究で記述されている発行年月日の、とくに日付がみな微妙にズレているのだという。
上田信道「巌谷小波「日本昔噺」叢書の書誌的研究」 『学大国文』(45) [2002]
http://nob.internet.ne.jp/note/note_22.html

 また、たとえ初版を確認できたとしても、もうひとつやっかいな問題が存在する。それは検閲制度から派生した問題である。すなわち、記載された発行年月日と内務省に届け出られた発行年月日が一致していないことのあることだ。出版社から内務省に届けられた検閲本(単行本)は、検閲が終了したあと原則として旧・帝国図書館に交付されていた。そして、その多くは戦後に国立国会図書館へ所管替えになったのである。こうした資料の中には、奥付の発行年月日が手書きで訂正されたうえ、発行責任者の訂正印が押印されているものがある。おそらく内務省への届け出の際に、何らかの理由で書類上の発行年月日と奥付に記載された発行年月日との間にずれが生じたもののであろう。こうした場合には、初版の奥付を印刷しなおすことなく、検閲本の奥付の発行年月日だけを訂正して済ますことが、便宜的な措置として黙認されていたようだ。

なるへそ。
著者は内務省に届けられた検閲本(の副本)で、国会図書舘に残っているものを見てこのように推理しているのですな。
一方で、これまでの研究者は、手近なコレクション(私有物や大学)にある「流布本」の奥付をみて、書誌を記述してきたから、実際の納本届出にもとづく日付とズレちゃう、と指摘し、わちきもそれに賛成なり。
いつか谷沢御大が、分析的書誌学ならば、年や月だけ
(かきかけ