書物蔵

古本オモシロガリズム

読書

しばらく前に数百円で拾った新書を読了。相場は1000〜2000円。どんな時代にも、「時代のババ」(by呉智英)をつかませられちゃう人々がいるのだなぁ。満洲へいった少年たちの話。
上さん自身がばばをつかませられかかったから全体が怒りに満ちた記述であるが、わちき的には、満洲義勇軍がやってた農法についてがオモシロ。
満式か米式じゃないとダメな土地なのに、加藤の精神主義から編み出した「天地返し」農法に固執して、農産物があんまとれなかったところ、ようやく日式の北海道農法が導入され、改善に向かったという。

ところが、これにたいして、加藤完治が猛烈な反対をしたのである。(略)彼はその農本主義理論から導かれた一種独特の精神主義に立って、満州式粗放農法もアメリカ式機械農法もふたつながら否定し、日本農民の満州開拓はあくまでも人力による<天地返し>農法によるべし――と主張したのだ。(p.140-141)

こー書くと、ファナティックな指導者が特別悪い、って感じられもするが…
実は同じような状況は、民主国日本の我々も日々、体験しとることだよ。失敗が明らかになったり、よりよい手段が出てきても、「いまさら止められない」とか。
それを止めるには、うまい具合にタテマエが通る新しい方式を見つけてくるしか手がないとか…
特に非営利事業によく見られるところ…(・∀・)

昨日、深夜までかかり読了。報道部員として昭和19年の年末、マニラに渡ったら、一週間で撤退。ルソン島のなかを逃げ回る。それでもトラックで移動できたというのだから、ものすごく恵まれているが。昭和20年5月!空路、奇跡的に台湾へ脱出するまで(たまたま不時着した偵察機に便乗できた)。
結局ルソン島で死んでしまう同僚の作家、里村欣三のことば。

私〔今日出美〕は里村君と一緒に焼け跡を見に出かけた。議論の嫌いな里村君は、
「どうして新聞記者の連中はああも議論をするのかね。こんな山の中へ来ても、飽きずにやってるね。僕は労働者出身だから、左翼にいた時分もインテリのイデオロギーの論戦が一番厭だった」(p.81)