書物蔵

古本オモシロガリズム

ブラウジングの効能を「測って」こなかった人文学者・図書館学者

数日まえはかともさんとこで知ったんだけど,京大の図書館で騒動がもちあがってるらしい。
京都大学附属図書館BNC(バックナンバーセンター)の桂キャンパス移転に反対するブログ くわしくは←へ
要するに「本部キャンパスの書庫があふれそうなんで,古雑誌を移転させる」ということ。
人文系の先生たちが反対してる。
わちきの感想は,しょうがないなぁ,といったところ。いや実は人文系先生同様に反対ではあるのだが…。

利用統計は貸出統計でしかない:ブラウジングの効能はどこへ

ひとつには,ブラウジングの効用といったものが,文学レベルでしか語られていないことがイケナイ。
利用統計は,(館内)閲覧回数じゃなくて(館外)貸出回数しかとれない。これは貸出運動の初期に,ほんのちょこっとだけ論争になったんだけど,けっきょく怒濤のごとき貸出傾斜経営の成功によって跡形もなくふきとんだのだ。
ほんとなら,これ論文ネタになるよね。まったく積み残しのリアル図書館ネタ大杉。
たとえばさ,貸出禁止の辞書類(reference tool)ってあるよね。あれの貸出統計とったらどうなるか (・∀・)
まったく利用されてないことになる,って貸出=利用という枠組みしかないからねぇ。でもreference toolは,聖域として皆に認知されてるから,統計ゼロでも近くにおいてもらえるのだわさ。ほんとは一夜貸し(over-night loan)をすべきなのだけど。
Open shelves(開架)と,それにセットのブラウジング(=虫の,葉のお好み喰ひ)の効用については数値化しずらいから,数値しかみえないクラークにばっさり切られてしまふことになる。

人文・社会系の雑誌はいまだブラウジングでないと

で,じつは自然科学系の学者にもブラウジングの効能はみえない。だって記事索引や引用索引がほぼ完備してるし,完備してない邦文のものは参照しなくても(自然科学系の場合)あんま影響がないのだ。
でも,人文・社会系は事情がさかさだからねぇ。
それ系の雑誌はいまだブラウジングに頼るしかない。だから先生たちが反対するのは正しいのだ。
でも,わちきは図書館趣味者なんで,あえて図書館運営の観点をもちこむと…

単行書を僻地へ移転させよ

と言いたい。
書庫がせまくなってるのだから,あれもこれもではなく,あれかこれか。
じつは,単行書は,書誌が一応完備してるし,最悪,古書店で買えるからね。
でも,凡庸な判断はつねに,雑誌をおしやることになる… そしてそれを追認する凡庸な観客たち…