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パブリック・フォーラムってどうよ? designatedならいいけどね(・∀・)

松田 浩 「公立図書館の不公正な蔵書廃棄と著作者の表現の自由--最一小判平17・7・14(最新判例演習室:憲法)」『法学セミナー』 no.612, (2005. 12) p.124
図書館員じゃなくて,法律学徒の解説がほしかったのだが,うーん,紙幅が足りないせいか,あんま面白くなかった。ただ,米国憲法理論とのリンクが指摘されてたのはひろいもの。
解説部分をみると…
「公立図書館は〜大規模な給付作用」ってのが従来の定説みたい。一審もこの定説を踏まえて,「図書館の裁量行為に対する著者の法的利益の存在を否定している」という。
「しかしながら」…
「本判決は,公立図書館を<著作者>が<公衆>へ向けて思想を伝達する<公的な場(public forum?)>と位置づけることを通じて,この思考法とは決別した。」
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!! 「パブリック・フォーラムの法理」
いやぁ,これ,来る来ると思ってたんすよ,パブリック・フォーラム。
これ,単に公共の広場って普通名詞じゃなくて,米国憲法理論の専門用語なのだわさ。
十年以上まえの,クレイマー事件(無宿人の迷惑行為事件)で,pubulic forumの法理が引用されて,日本の図書館の自由ヲタクがさかんに引用してたけど,その当時,友人Cにこう聞いたものだった…

「各国で法体系というものは違うものなわけだけれど,米国の判例が日本法に直接影響するなんてことがあるのかい?」
「いや,上位法のレベルではありますよ,憲法レベルとか。」

いやはや,ほんとにそうなるとは。
もちろん,今回の判例は,はっきり「パブリック・フォーラム」なる言葉を使ってはいない。これに米国憲法理論のpublic forumが影響を与えているのではないか,というのは,まさしくこの文献の松田浩先生の見解(それも「?」つき)なのだわさ。
でも,まー,シロウト目にみても,米人の直接的影響は明らかかと。
んでも,あれは米人の議論だから注意しないとね。たとえば,きちんと調べると,public forumには,2類型(traditional と designated)あって,どっちの類型をあてはめるかで,サカサの結論が出てくるとか。
わちきはもちろん,「公共図書館=designated public forum」という立場だけどね。けど,designatedの日本語訳が,ワケワカラン。まあ,同義語のlimited public forumのほうが,日本人には分かりやすいね。限定的パブリックフォーラム
わちきの理解では,伝統的forumが政府ができる前からのものであるのに対して,designatedは,政府が発明したpublic forumであるということ。
松田先生の解説は,途中から,民間団体の規範性のうすい「図書館の自由宣言」に話がズレてってしまって,法学論議じゃなくなってるのが惜しい。
ただ,松田先生の今の所属が駿河台大学なのが,ね。ここの先生には図書館関係者が多いから影響されたのでせう。