書物蔵

古本オモシロガリズム

 クリッピング論争?

めずらしく図書館時事ネタを。G.C.W.氏のブログで知ったんだけど,ちょっとしたクリッピング小論争をみつけました。
で,おもしろい。コトの当否じゃなくて,クリッピングが主題になってることが。
いやー,図書館員がクリッピングについて語るのを読んだのは,ほんと数十年ぶり。あんまり興味深いんで,ついつい紹介しちまいます(^-^;)
このクリッピング小論争を,もしマジメにやるとすれば,また一から議論をつみあげていくことになるのだろーけど,ほら,ちょうど40年前に協会本がでてるじゃないの。

館界の足踏み

クリッピングについて単行書まで出したのに館界は40年間,足踏みしてたというわけだす。貸出し大躍進の影で,40年間もほっぽっとかれた問題はイロイロあるよ。新聞DBの普及でなし崩し的にクリッピングは廃止されてったけど,ほんとはその意味のありやなしやについてキチンと論じたうえで廃止すべきだったと思う… 稲村徹元氏が趣味誌「スムース」で国会図書舘での廃止を(きわめて間接的に)叱るぐらいしか記事はなかったねぇ (・∀・)  だんだん徹元氏のファンになりつつあり

テツゲンさんの「叱る」

国会図書舘には,戦後何十年にもわたり蓄積された新聞切り抜きが眠っているのだろうねぇ。一部の復刊屋が注目して(『ドキュメント戦後の日本』大空社 1994-1998),全50巻にわたる大部なものを出したけど,それでも一部なんだろうねぇきっと。
わちきの嫌いな著作権の問題とかあるから,大空社みたいにクリッピング版面のリプリントだとどうしても制約があるね。だからそうじゃなくて,記事ごとについている主題標目(途中までたしかUDCだったはず,あのUDCですよ)とかの概念索引法の部分を落とさずに書誌事項のみをデータ化して,DBに搭載すべきだよ。そしたら,それこそむちゃくちゃ使えるものになる。あそこが今してる,ネットのコピーでフルテキストも入手できるはずだし。
民間の新聞DBの短所(地方紙がない,古い記事がない,主題標目が使えない)をみんなカバーできちゃうじゃないの。これは国家国民にとって有益な事業だよ。文献報国なり!

概念索引

おそらく,概念索引(人間が見て検索キーをつける)の利点というものがまったく分かってないからそうなる。そのコストばかりが強調され*1,時代遅れだからって一気に廃止されちまう。
まぁ,日本の場合,分類・件名の専門家ってのはほとんどいないし,目の前のユーザやデータ作成の現場をくりこんだ議論ってのをその数少ない専門家たちができなかったのも事実。最後に文句をいったのは,職人的索引家の稲村さんだけだったとゆーのも,それを象徴してる。そういえば書誌索引家協会ってのも,あったなぁ… 物集高見賞とかの新聞記事をほほえましく思った憶えがあるけど… なんでなくなったんだろう。と問いを発したら…,その時に得た答えはやはり理論家と実務家との乖離。

[図書館] 平凡社新書の来月新刊に

月刊百科をななめよみしていたら,
小林英夫『満鉄調査部 「元祖シンクタンク」の誕生と崩壊』(平凡社新書 289)
というものが来月でると知る。楽しみなり。調査と資料と国策… うーん,マジメ図書館員なら胸躍るだろうね。
ネットでみると,このまえでた調査部の本の著者みたい。調査部に関してはいろいろ本があるけど(草柳大蔵とか),資料の収集や管理に重点をおいた本はあんまないみたい。

*1:コストの具体的中身には触れられないまま。ただこれを言うといろいろとね。Political Incorrectになるんだ。けど,記事予告にあった「大野晋といいかげんな女の子」であつかうつもり