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古本オモシロガリズム

OPACを簡易人名辞典として使う

1960年代以来,日本の図書館界は目録をないがしろにしてきたんだけど(偉大なる「中小レポート」を参照せよ),その目録大系のなかに名称典拠(name authority;人名典拠とも)というものがある。わかりやすく言えば,同姓同名でちがう著者を識別できるようなリストね。このリストのデータがあれば,同姓同名の異人でも検索しわけることができるわけだ。

名称典拠の本来の用途

これは本来,人名辞典とは違うもんなんだけど,コンセプトが優れているので結果として人名辞典としても使えるのだわさ。まーたまにシロト考えの半可通が典拠ファイルの有用性をみて,「人名辞典みたいにデータを満載すべし」ってなこと言い出すけどね。これは典型的日本人が陥りやすい失敗なのだ(下記,附論参照)。
典拠は文献世界のなかでのアイデンティファイに最低限必要なデータを登録してあるもんで,最低限だから,1)(相対的に)多人数分をつくれる,2)プライバシーなどに抵触しづらい,ってわけだ。で,ここが重要なわけだが文献を出した人なら無名・有名とわずに一様にデータが存在するのがミソ。
おそらくシロト考えの方向でやると,大量の滞貨(作業待ち)が発生する,プライバシー問題の水掛け論に忙殺される,という2点から失敗確実の事業となるね。
ただし,この方向でやる図書館もないではない。中国の国家図書館?はやるっていってたよ。でもあそこは,1)国策なら人力はかけられる,2)(自由主義国的意味での)プライバシーは存在しない,ってゆー前提があるからねぇ。
おかれた環境も勘案して比較しないとね。
話をもどす。
人名辞典のひとつの盲点に,有名人は収録されるけど「ちょっとだけ有名な人」は収録されないということがある。
これは,
本と中国と日本人と / 高島俊男. -- 筑摩書房, 2004.2. -- (ちくま文庫)
にも書いてあったけどね。

 数年前,親しい編集者が新しい日本人名辞典の編纂を始めると聞いて,わたしはこう言ったことがある。
「文学者などは専門の辞書もあり百科事典や国語辞典にも出ているからもういらない。それよりも,実業家,軍人,教育者,地方政治家など従来の辞書があまりのせない人に重きをおいたのを作ってくれ。かならず有用なものができる」。
 相手は,「そりゃだめだよ。えらく手間がかかるし,それに夏目漱石石川啄木ものってない人名辞典が売れるものか」と答えたものだ。
 この『対支回顧録』正続の値打ちはまさしくそこにある。役人,軍人,商売人,浪人など,ふつうの人名辞書がのせたがらない人の伝記が,ここにどっさりはいっているのである。

と,いうことです。
この世の人間は,言説空間上3つに区分すべきだと思う

有名人(セレブ・経済人・専門家)→ 人名辞典(人事録,業界名簿,研究課題総覧)
無名人(市井人・あなたやわたし)→ 検索対象にならない(なるべきでない)
ちょっと有名になりかかった人  → 検索対象なのにツールが少ない

有名人とふつう人の間,ちょっと有名になりかかった人ってのが一番のくせ者。
ハナっからドーデモイイふつう人なら調べる必要もないし,それこそプライバシーを覗くことになっちまうからねぇ。さほど有名でないけど,ちょっと有名らしい人物を調べるのにこそ正当な理由もあるしニーズもあるのだ。
少し前,グーグルかなにかでよく検索された人名ってのが話題になってたけど,有名になりかけのタレントが一番だった憶えが。
この,ちょこっと有名人をここでは半有名人と呼ぶね。
この半有名人から無名人にいたるところを調べるのにNDL-OPACの名称典拠機能を使うのだ。

名称典拠を簡易人名辞典に応用する

書誌検索の著者名欄や,著者名検索,件名検索の画面から人名を検索するのだ。
この検索が,ただのネット検索とちがうのは次のこと。
まず,検索対象

(かきかけ

NIIのほうにも典拠ファイルあるみたいだけど,いちど批判したようにデータの品質の問題があるからねぇ。いまNIIのサイトみたら「重複データ」なる言葉でデータの質を測って,それなりに危機感を持ってるみたいだけどね。よう知らん。