書物蔵

古本オモシロガリズム

「窓ぎわのトットちゃん」を見て、なぜだか大東亜図書館学を思い出す

午前中から起き出して、アニメ窓ぎわのトットちゃんを見る。ネット上の評判が良かったから。
見てみると、うん、わちきには分かりやすすぎる部分があるな。一般には良いアニメではある。特にトットの妄想場面の「動画」など、好きな人はいるのでは。
例えば、日米開戦の場面で「昭和16年」ってテロップを出しちゃうのはやり過ぎのように思う。なんとか作劇上の工夫で判るようにしてほしいなぁ。そういったちょっとくどい説明がある一方、お父さんの勤めている楽団の指揮者がドイツ人で、防共協定で喜ぶ団員を尻目に、自分はもうドイツ国民じゃない、というところは、ユダヤ系だからとちょっと説明を入れたほうがいい気がした。
親が買ってきた原作を1981年ごろに読んでいて、最後の場面を知っているから、わちきなぞ校長先生の気持ちに寄り添ってしまったなぁ。これは前職で下手に自分も使命(むしろ召命?)感などを持っていたからかしら。
新しい車両が図書館になったのにもホッコリ。
電車の場面がけっこう多かったね。大井町線の場面が良かった(お金かけてるんだろうなぁこの部分)。

ぜんぜん違う文脈だけど、プールの場面など、現代米国的ピューリタニズムから放映禁止になるだろう要素があるのは、これは関係者は覚悟があるね。でも、1990年代まで、日本で子どもは性的対象でないと表面上されていたから、当時の流れとしては自然ではある。
アニメ好きなら一度見ていいかな。あと戦時ものに興味がある向きとか。戦前の中産階級――といってもアッパーミドルだけど――の風俗がよく描けていた。
トットの友達で小児麻痺の子が本が好きで家に百科事典があるのは羨ましいね。
原作でも最後にあったトモエ学園が空襲で焼失する場面、B-29を真下から描くのは斬新ではあるけれど、私の趣味(?)としては「火垂るの墓」ばりに地上から描くか「風立ちぬ」みたいに遠景で描くのがいいと思った。
戦前プチブル生活という点で映画「小さいおうち」を思い出したが、あれも、空襲で小さいおうちが破壊される場面がマイナスだったし、意外と難しいのかも。
そういえばトットちゃんの家、強制疎開で引き崩される場面があったな。トット本人は青森に疎開していて見ていないが、自分が住んでいた家が壊される場面を見ると普通の人は涙が出ちゃう(これは自分も経験した)。この映画、後半は悲しい場面が多いので注意。となりのカップル(の女性)は結構泣いていた。
バカな「大東亜戦争」のおかげで、1930年代に一部にあった都会的でモダーンな生活が日本に戻ってくるのは1970年代まで40年間も遅れる。
見終わった後思ったのは、お蔵入りにしてある「あったかもしれない大東亜図書館学」のこと。市販本にするのは手間がかかって無理だから、とりあえず次の「近代出版研究所叢書」としてそのまま(顔文字(๑´ڡ`๑)入りで)出そうと思ったことだった。図書館人、あの戦争に非協力的なイメージがあるけれど、そうでもないのよ。第2代帝国図書館長が言ってたけど、協力しようとしたが当局が相手にしなかったぐらいが本当のところ。少なくともやろうとはしていて、いろんな悲喜劇があったのに、それが全くの美談に置き換わるか、全く忘れられるかになっちゃってるし。