書物蔵

古本オモシロガリズム

本の奥付に著者略歴が載るのは1943(昭和18)年2月頃から

f:id:shomotsubugyo:20210421163729j:plain日本書の奥付にある著者略歴欄はいつからあるのか?という疑問が出ては消えていく。


奥付研究はようやく注目を浴びつつある。
www.hanmoto.com
11年まえ一度、先行文献をまとめたこともあるね。
shomotsugura.hatenablog.com
奥付ページはいろんな要素からできているんだが、その一部である著者略歴欄については3年まえ、規範の出どころにいついて文献が出ている。

  • 林昌樹「古本社会主義!:戦時における本の価格表示 (停)マルテイと(公)マルコウ 付論・奥付における著者略歴記載の制度的起源」 『文献継承』 (32) 1 - 9 2018年3月

web.archive.org

これによると、

出文協の 1942 年 12 月 9 日の会議でこれを各 社に要請することに決まり、「書籍に編著者又は訳者の略歴掲載要項」というものがつくられ、1943 年 1 月 21 日以降企画の書籍につき、編著者、訳者の略歴を奥付上部等に記載するよう実際に広報されていたことがわかった(「書籍に編著者又は訳者の略歴掲載について」『出版文化』(43)p.7(1942.12.21))。

という。
要するに出版文化協会が、義務でないけど要請として昭和18年1月末から新規企画につけろ、といっていた。まぁ実際についたのは翌月あたりだろうねぇ…
出文協自身は「要項」の目的は

読者が編著者又は訳者の略歴を知ることが出来れば、其の書籍の内容と特質とを概念的につかんで其の選択に便宜を与へるのみならず読書指導の一助にも良効果を齎すものである

としている。要するに、書店で本を買う人に奥付を読ませて、正しい購入決定をさせる、とうことと、図書館その他がやっていた読書指導に役立つ、という。
小林は「同時期に始めた書籍の買切制をふまえての措置だったのではあるまいか。」とも指摘している。