書物蔵

古本オモシロガリズム

多田蔵人さんの「持続する書物」

日本古書通信』2018年3月号は読みどころが多かった。
巻頭、多田蔵人さんの「持続する書物」は、同じ判型・装丁のロングセラーを「持続本」と呼び、「文学史を短い流行のの交代として見るのではなく、もっと息の長い深層の動きに目を向けてみる試み」だという。
連載になるようで、これはオモシロい。
そもそも戦前、ベストセラーなる概念が日本になかったことは、ちょっとした出版史ツウならば知っていること。ではどう考えればよいか、というオルタナが示されている。
じつは「ベストセラー」概念を戦前に遡及すること自体、かなり危険で。
最近オベンキョして確信を持ったのだが、戦前の日本人は、ジャンルの違う本同士をニーズの量(絶対数)で比べるという考え方自体しなかったようなのだ。
もちろん相対的に売れる本、相対的に人気の本というのはあったのだが、ジャンル違いのものを絶対数で比べる、などという発想自体がなかったらしい。


というか、ちゃんと検討しないと常々思っていることからの感心もある。