書物蔵

古本オモシロガリズム

業界誌『製本』昭和3年の大宣言

本誌は、前には唯に、東京製本同業組合の消息を語る月報に通〔過?〕ぎなかった。それが組合の報告をも兼ねた一種鵺的の雑誌と変り、題号も「製本業報」と改め、第一号を発行するに到ったのは昨年九月であった。かうして製本業界を中心に、関係深いあらゆる方面に向って実物を提供して、問ふて見ると、いろ/\な賛否が交々集った。
 その中、最も大きな力を与へてくれたのは、「宜しく鵺的態度を脱せよ、而うして、現在の業界にも読書界にも、一つも無い製本専門の雑誌と化けて、一層のこと、斯業開発の為めは固より、世間に向かって製本趣味の鼓吹と共鳴とを使命として、更らに大きく立て」。〔ママ〕と云ふ教えであった。

 出版界の下積み、印刷界の付随者として、甘んぜねばならなかった製本界に、専門的雑誌の生れなかったのは、固より怪しむに当たらない。その製本界に一大自覚を促したのは円本流行てふ出版界の大量生産実現に依る「工賃低下」なる恐怖的刺戟であった。とすれば、本誌の前身「製本業報」の出現は、又た洵に、製本界自覚向上の光輝ある反影と断言されるのである。

製本. 2(1)
1928-01