書物蔵

古本オモシロガリズム

めも

(引用者においてカナをかなに、句読点を補足)

出版発売を禁じたる図書あるとき通知方

二十一年七月二十三日内務省達を以て取消す

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 内務省達/十六年二十三日/警視庁府県

出版発売差止〔め〕候図書を、他の管下に於て翻刻公売等致し候らはば、甚だ不都合に付、爾後、差止〔め〕候節は、其の都度、該書名、取扱振り等、図書局長より通知致すべく候条(そうろうじょう;ので)、此の旨、予て及内達候也

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 内務省図書局議案 十六年三月五日

 甲地方人民にて出版発売を差止められたる書籍を、乙地方の人民、心得ずして之を市店に公売するのみならず、或いは翻刻して届出候も、其〔の〕地方庁、之を知らざるより直ちに其の書面を進達致し〔いたさず?〕候儀、往々有之。

畢竟、公私共、其〔の〕差止めたる書籍なることを了知せざるより生ずる事と存候得共、抑抑〔そもそも?〕条例に抵触せるを以て出版発売を差止られたる者にして、猶且、発売或は翻刻致様にては、取締上、不都合少なからず。

乍去、其〔の〕弊、未だ較然、著名ならざるを、予め告示相成〔り〕候〔は〕ば、却て不可然(しかるべからざる)場合も可有之(と)、被存候得ば、今般、各府県へ御内達相成〔り〕置、爾後、出版発売差止の都度、図書局長より時宜見計ひ、最寄の地方は勿論、三府等へ通知相成。其〔の〕庁に於て注意致し、若し翻刻届出候はば、直ちに説諭の上、却下し、或は公売者を認候節は、告発為致候はば、取締も行届き、自然、其〔の〕弊も止息(しそく)に属し可申。

因て御内達案等、取調べ、此〔の〕段、仰高裁候也。

ある管轄下の出版物で発禁にしたものを、他の管轄下で、新規に出版したり販売したりするのは、非常に不都合なので、これからは発禁にした際に、その都度、当該書名や処分内容などを、図書局長より警視庁や各府県(警察部)

切抜かれた書籍と共同便所

平安神宮の朱塗の大鳥居を青空の下にくぐって、京都府立図書館の閲覧室の人となったわたくしは、借り受けたエンサイクロペチア〔ママ〕のある頁のある写真が、切抜かれてゐるのにがっかりし、ついで、公憤が間歇泉のごとく後脳部に湧き立つのを抑へきれなかった。しかも、便所へゆけば、使用に堪へぬほど汚穢になってゐて、その臭気は心臓をついた。

 日本の公共物にたいする道義のひくさはこのふたつの例が実証を下してゐる。いかにすれば、新生日本の国民道義を昂めえるか、これは、各人に課せられた大きな宿題ではないか。(p.66)

松本仁デモクラシーと國民道義(大阪新聞社1946.3)<<