書物蔵

古本オモシロガリズム

おはぎみたいな図書館本

わちきの影響でか日本図書館本を読むやうになってすまったネットの友は二人をる。そのうちのひとり、ピラミッドの友ならぬオタどんがかやうにつぶやく…

奥泉和久『図書館史の書き方・学び方』半分読了。誰ぞはどこが気にいらんのかのう。
https://twitter.com/jyunku/status/504471789099954177

なんとわちきが8/12に「新しい幹線にて、図書館史本に憤激(^-^;)」などと書いたがために、どっかで入手して読んどるらすぃ〜(@_@;)


うん。この本、まとまってて価格、束ともに手頃で、意図は悪くないんだけど、結果がマズイ。
(マイナスの)批評こそ、名指しでやらねばならぬといふ学問の常道、かつわちきの趣味からして、以下、述べてみん( ・`ω・´)b

この本の構造→おはぎ

饅頭は中に餡、外に皮。おはぎは中に皮(皮というかお米?)そとに餡。この本はまずおはぎ。2つの部分から成っている。最初の1,2章と最後の7章が「書き方」で、こっちが餡。真ん中の数章が「書き方の事例)」ないし「学ぶ(なぞる)べき対象」として「学び」*1で、こっちは皮といふかお米の部分。まづハ書き方、つまり本書の本来の主題(餡)から。

ハウツーとして具体性がイマイチ(餡の部分;1)

英文の並列タイトルが示すような、how to writeやhow to leanといった「ハウツー本」としては具体性にイマイチ欠けるんだよなぁ。
それは例えば、先行文献として自治体史を見ろ(p.225)、というのはいいとして、ならば自治体によっては自治体史と別に教育史が出てないか調べろとか、自治体史がなくとも行政史も出とるかもしらん、といった、より具体的なチップス、ちゅーかノウハウへの言及がないんだよなぁ。あるのは「くまなく目をとおす」(p.225)といったレトリック。
戦前戦後の図書館人情報なら必ず『全国図書館職員録(昭和30年10月1日現在)』を見ろ、館長から小使さんに至るまで年齢、学歴、職歴が分かるよとか、吹けば飛ぶよな弱小ダメダメ図書館でも過去に存在したものならどんなものでも文部省に登録されっから、昔の賢いレファ担当が自作した『文部省年報書籍館一覧表. 明治8-45年』『文部省年報公私立図書館一覧. 大正2-15年』を国会に見に行けとか、さういった具体的に役立つノウハウ。
団体史の書き方一般本としても、かの大佐三四五『社史の編纂と作成』(山本書店,1967)を始め奉りテ、近江, 哲史, 1933- オウミ, サトシによる一連の社史本にまったく言及せんのは不親切。大佐といひ近江といふも、図書館人そのものか、あるいは館界シンパなれば。これは先行文献を参照する習慣がないのかすらん(゜〜゜ ) そして彼らは社史の書き方という餡だけで1冊まるまる作っていることからわかるように、本来の中身、ハウツー図書館史といふ餡はまはりだけではとても納まらないはづなのぢゃが…

概念整理がイマイチ:(餡の部分;2)

著者は司書と図書館の友に向けて、自館史を書きんしゃい、その際は問題意識を持ちんしゃい、と勧める。単館史を一般図書館史と意識的に分けて考えるのは結構なことなれど、それならそれで、もうちっと整理して書かないと。
例えばわちきのいう「単館史」を指す表現型が、4,5個でてくるよ。それに、これは明確に間違った考え方だと思うんだけど、単館史がそのまま図書館一般史に通じるというのはナイーブな見方。石井敦あたりが存命なら批判されちまふのでは。

単館史(正史)に問題意識を持ちこむ危うさ(餡の部分;3)

変に問題意識で記述されても、当該館のこともわからず一般図書館史にも使えんということになるのでは。だいたい、その問題意識とやらで出なくなることもあるんだし(自治体史で訴訟になった例がある)。わちきは出ないより出るほうが、それがたとえお手盛り万歳史観であったとしても、よいと思うがの(*´д`)ノ

単館史の事例:国会さん

たとえばわちきがギョーカイに潜り込む前から観察しとる国会図書館は正史を2回出しとる。三十年史と五十年史。この三十年史を(それこそ)くまなく見ると、資料編の年表にのみ一行、この年、春秋会事件。ぐらいのことが書いてある。よく書けたと思うよ。五十年史はやっぱり本文にはないが、CDで参照しづらい年表のはうに、春秋会の事実関係が載るやうになった。
全国的有名人だった初代が疑獄事件で横死して、それは大問題なのに、それを書かなけりゃあ正史が出せぬといふことになれば、五十年たとーが、百年たとーが、絶対に国会図書館史の単館史(正史)は出ませんよ(σ・∀・)σ

初代館長はなぜ横死したのか? 春秋会事件がその後の国会図書館及び日本図書館界全体に及ぼした影響があったとすれば、それは何か?

なんちゅー章など建てられるわけもない。けど、問題意識とやらがもしあるんなら、国会図書館史においてこれは欠かせぬ。欠かせぬが、正史はせめて事実関係をきちんと書いておくだけでも十分なのだ。
さかんに問題意識を持てというけれど、中途半端に持たれるよりも、組織名で出される単館史なら、フツーに記念史・顕彰史したほうがよいだろう。単館史は記念史でよい。ヒドイ言い方をすれば本質的に万歳史観で書いてよい。事実関係だけは最低限、表などに載せておいてくれれば。
と、ここまで「餡」のことばかり書いたが、「お米」んとこも問題山積みでござるよ(。・_・。)ノ
でもちかれたので、つづく(^-^;)

*1:学び「方」ではない