書物蔵

古本オモシロガリズム

同人誌即売会の一般史に至る道


けふ、臨海副都心駅にて貰ふたウチワをパタパタしながら拾ふた「評論・情報」系同人誌。
なかでも「同人誌即売会史研究」には感心した。

  • 同人誌即売会史研究 / 国里コクリ. -- [東京] : よつばの。, 2014.8. -- 26p. ; 22cm

失敗の歴史・衰退の歴史

わちきが昔から興味がある歴史の論じ方に、「失敗史」「廃止史」がある。もともとギボンよろしく、偉大なローマ文明の衰退史に興味があったからなんだけどね。
上手く行っていたはずのものが失敗する。営々と続いていたはずのものがいつのまにかなくなる、廃止される。しかしそーゆーことが、意外とわからない。
ローマ文明を形成しとった都市のネットワーク。ゲルマン人がやってきたり、なにやかやで、都市が消滅していく(国家という枠は残るのに)。けどその消滅史*1って、実は最近進んだのよん҉٩(*´︶`*)۶҉

即売会史=コミケ史…にゃのか(。´・ω・)?

あるいはまた歴史は、勝ち残ったものの発展史として書かれる。
(マンガ)同人誌の即売会史というものも、基本的にコミケの発展史・成功史として語られる。なんてったって55万人もの(三日間延べ)人員を集める即売会「コミケ」であり、日本で最初の同人誌即売会でもある。余談だが、わちきが愛好しとる週末の古書即売会は、いったい延べで人数はどれくらい来とるのだらうか… 二、三千人くらいかなぁ…(´ヘ`;) ちなみにこっちの即売会の最初はたしか明治43年横浜(σ^〜^)
話し戻すと。

ある即売会についてググってみたことがある

コミケの発展の裏には、コミケにならなかったコミケがいくつかあったろうことはすぐ想像がつく。
わちき、あるところでマンガ同人誌即売会の資料の山*2を見たことがあって、ちょっと調べてみたのだが、これがぜんぜん出てこない。

おかしい…(・o・;)
1990年代以降のことか、あるいはそれ以前でもサブカル系のことは大抵、ネットに少なくとも手がかりぐらいはあるものぢゃが…(*´д`)ノ
1980年代とはいへ、サブカルど真ん中でまったく出ないといふのも…(゜〜゜ ) これは意外と盲点なのか。サブカルでも、勝ち残り組をすこしはずれるとネットで出んのか(*´д`)ノ

日本の調べもの、その相場

いま日本で調べものをする際には時代とジャンルで見立てをする。時代ではウィンドウズの普及前後で、ジャンルでは正統文化(政治・経済・ファインアート)か、サブカル系かでわける。正統系なら現在の話でも紙メディア(新聞DBはこっち)、図書館を攻め、サブなら古い話でもネットから攻める(紙系だと資料が残っててもインデクシングされないことが多い)。
ところが、その、たしかにそれなりの隆盛を見た即売会のことがネットでわからんかったのである。

意外と盲点でしたの(。・_・。)ノ

いま、この「同人誌即売会史研究」を見ると、「まんが市」(1976-1979?)をはじめ、当時としてはけしてコミケにひけをとらない即売会がいろいろあったことがわかる。
これに挙げられとる即売会は、ほろんでしまったけれども、たしかにあったことだし、なくなっちゃった即売会の歴史は、失敗の歴史でもあらうが、同時に可能性(可能態)の歴史でもある。なにかが違えば、コミケが消滅してホニャララ即売会として55万人集まっていたかもしれんのよ。

この本のキモ

第二章がこの本のキモと思われるので、標題だけ抜き書き。

まんが市:真・日本で2番目に開催された同人誌即売会(1976-1979?)
コミックバザール:黎明期・関西の雄「コミール」(1977-1986)
同人誌ミニコミフェア:ミニコミ20年漂流(1977-1997)
コミックカーニバル/コミカ:森博嗣、堀田清成が築いた名古屋・黄金期(1978-1982;1984-1986)
くりくりクラブハウス同人誌即売会毎日新聞くりくり編集部主催のミニ即売会(1978?-1986?)
コミックフェア/COMIC FAIR:コミックストリートの源流(1979-1984

ショージキ、ぜんぶ知らんかった(^-^;)
即売会ごとに、「概要」「開催年表」「研究メモ」「派生イベント」が立項されとって、簡にして要を得とる(。・_・。)ノ

サブカル史学の方法

それに滅んだ即売会たちの開催事実について、雑誌広告などから実証的に攻めとるのがイイ(゚∀゚ ) 実際、関係者の回想って、数値的なものが微妙にまちがってをることが多いんよ。これ歴史学の基本ウン(*-ω-)(-ω-*)ウン
とくに1995年以前の

サブカル史をやる王道は、実は専門雑誌の広告*3を丹念に拾ふこと

なのだわさ(。・_・。)ノ
第三章では「コミックシティの成立過程」が記述。第一章は「同人誌即売会概史:昭和編」。
こーゆーのを、科研費申請書にいふ「萌芽的研究」といふのかすらん(゜〜゜ )

*1:わちきなぞ、若いころ東ローマにおける都市の「カストロン(城塞)化」に興味津々たるものぢゃったが、研究が進展したのはわりと最近のこと(いまみたら、にゃんとウィキペにカストロンの項目があるhttp://de.wikipedia.org/wiki/Kastron

*2:おそらくその会が滅ぶ時、関係者が最後の力をふりしぼって算段したんだと思う( ;∀;) 

*3:このイミで、国会のデジデジは役にたたんように記事情報を採録しちまったのぅ…(#+_+)