書物蔵

古本オモシロガリズム

京城の書肆

京城の書肆 奧平武彥 ​文化と大学 : 法学随想(1935)

大学が出来てから店頭に学術書がならぶやうになったと、いふことを聞くこともある。新刊書肆といへばまづ大阪屋号と日韓書房。恐らくこの両店の仕入部が怠るのであらうが今でも新刊は特に注文して取寄せねばならぬことが多い。定価の六分を郵税として付加されてゐたのが内地なみに定価販売となったのがついこの間のことである。新時代の文化の建設には新刊書肆も丸善出張所もまだ/\活躍せねばならぬ。古本屋といへば本町筋に八九軒、しかし亜細亜協会朝鮮支部雑誌を始め京城で刊行された洋書など一冊とてこゝで見つかるものでない。
(略)
鐘路以北に朝鮮人の古書肆が十軒あまりもある。こゝにも嘗ては東洋関係或は旧教関係の洋書に面白いおのがあったが、近来は共産主義のパンフレットの類がどの書架にも目白押にならんでいる。朝鮮の青年諸君の思想はと尋ねる人には、朝鮮古本屋の一巡をお勧めすることにしている。〜