書物蔵

古本オモシロガリズム

さういへば国会さんの一館一般分類は

正統的ディシプリンの系からトンデモ・いい加減な本を排除すべしという意見は、じつは前からあって、公共図書館大学図書館の一般分類表では、さやうな本はそもそも選書されないということから表のもとから構造や運用に反映されないんだけれども、実はよく考えたら、1館だけ表そのものに、そのやうな非正統的な本を別項目に置く分類表があったことに気づく。
非正統的な本が押し寄せる国会附属図書館の一館分類表がそれ。
いはゆるエヌディーエルシーと業界で呼ばれとるもの。
ただ、この表、オモシロな構造の表なれど、きちんと原理や目的が説明されることがないんだよなぁ。いつだったか、東京書籍の古いふるい司書課程教科書がじつはいちばん詳しかったような気が。
表の構成では2段階になっていて、まずハ、0次区分といはんか、記号のうちアルファベットにより3種類に分けられる。
この0次区分(図書分類にこんな術語はないよ)は、わちきがよく騒ぐ「整理区分」と呼ばれるからくりに連動しているのだが、その整理区分なるものも、図書館情報学できちんと議論されたことが一度もないようである(紹介なら一度だけ雄山閣のハンドブックでなされた)。
具体的には分類記号の先頭のアルファベットにより、次のように3区分されてをる。

A〜U 一見、ふつーの本
Y  一見、どうでもいい本
Z  一見、雑誌、新聞に見える本

で、たとえば宗教の本だと、伝統宗教や十分世俗化した宗教だと、HM〜HPに入れるんだけど、類似宗教といはんか、さういった世俗化してない新興宗教的観点で記述されとる本は、Y86とかいふ項目へいれちゃふ。もちろんHのほうにも類似宗教の項目はあるんだけど、そこには類似宗教研究書しか理論上は入らないことになってをる。
で、以上が第一段階の区別なんだけど、第二段階でどうなってをるかといふと、各ディシプリンごとに、雑なる項目が予め設定されてゐる。
たとへば、医学がらみの主題なんだけど、記述や観点が正統的西洋医学でないやうな本があると、どのような具体的な主題があっても、SC19医学の雑へいれちゃふ。たとへば、闘病記はそれぞれ特定の疾患という主題があるけど、正統的西洋医学的手法で記述されはせんので、その項目には入れずSC19にはいっちゃふ。

医学 Medical sciences
SC 1   書誌
SC 2   事典・便覧類
SC 3   用語集
SC 8   学術団体・研究機関
SC15   合集
SC19   雑
SC21 医学
SC23   統計医学
SC25   医学史
SC28     日本
SC32     東洋
SC35     西洋
 以下略

などという構造で、最初のところが形式区分になっていて、たとえば医学に当てはめる本なら、SC21以下をつける前にSC1からSC19にはまるものがあれば、そっちをつけないといかんと表の序文にある。
たとえば、日本医学史事典という本にっは、SC2をつけないといけない。にゃんでこんな構造の表をつくっちゃったのかといふと、どうやらカード目録時代、あそこのレファレンサーが書庫で効率的に参照作業をするためらすぃーのだ(*´д`)ノ
いやさon-line catalogがない時代、書誌、辞書類を効率的に引くというのは参照作業の要諦ではあったわけで、今となっては(あるいはエンドユーザにとっては)バカバカしいが、当時の技術環境や当時のレファレンサーが占めた地位からいへば、なーるへそ、である。
わちきはてっきり、レファレンサーのために各類の先頭に(参照作業に)必要な本を集めるといふ意味があろうとは思ってはをったのだけれど、いまつらつら考へるに、実は各類の形式項目のうち「雑」は、表上は同じ位置になる他の形式項目とはま逆の機能で。

各類の配下にある下位項目から、参照作業に不要な本を引っこ抜いて集める

機能があるのだと気づいたよ。
レファレンサーは確かに最初に書誌、事典類を見るのだが、それで解決つかん場合にはふつーの単行本を参照することになる。
その時に、雑書がふつーの単行本にごちゃまんと混ざってたら、まさしく邪魔になろう。特にこの表ができた時代はまだ1960年代なのだから、知識もマジメなものと不真面目なものとで格が明確にちがってた。それに西欧科学への信仰・信頼も強かった。
紙しかない時代で、未知文献をさがす主題アクセスをする際に参照文献数をあらかじめ「きちんと」絞りこんでおくことは今よりずっと重要だったのではあるまいか。
話をもどすと。
だから、○×病についての雑著は、SC19といふことになる。
これ対し、NDCはそういふ構造になってをらんし、かつて一部であった同様の運用を(たとへば、特定疾患の本でもそれが正統的な記述でないばやい、490.49などのディシプリンの先頭の雑にしてしまふような運用)、禁じるような序文が新しくついたんぢゃあなかったっけ。