書物蔵

古本オモシロガリズム

公共図書館におけるトンデモ本の取り扱いは?

ふと気付いたんで、こんなんよんでみた。

  • 科学的合理性に著しく反する図書を図書館はどう取り扱っているのか : 聞き取り調査を手がかりに / 岡部 晋典 , 中林 幸子. -- (Library and information science (68), 85-116, 2012)

んー(  ̄▽ ̄)
全体として有意義かつオモシロなんだけど、細部に難があるなぁ。
あと前提のいくつかのうち、学問の3分類のうち自然科学とほかの人文社会系とちがう取り扱いをするとことは、わちきは納得せんが、まあ、これは価値の問題だからしょうがない。
細部の難の最大のものは、じつは『水からの伝言』の分類の付け方という図書館情報学でしかできない技術的なところ。
せっかく価値判断をなるべく留保して問題発見的なアプローチをとっているのに、あたかも『水からの伝言』を4類におかないのが正しいということを前提にしてるのが透けてみえちゃうところは(p.108右カラム上から10行目)いかがなものか。
これは実際に分類を付けているとわかるんだけど、DDCのグロッサリーだかなんかにある、attraction by termsという現象で、このことって、じつは日本語の教科書にでてないんよ。てか、教科書でない『図書分類の記号変換』に「誘因による分類」としてインデックスがたっているものがそれ。
表をつくる時には各ディシプリンを学問分類順に編成するんだけど、本を表に位置づける際にはディシプリンよりもタームを優先させてつけちゃうんよ。でないと、分類が破たんするんよ(そうしないと多くの本が049になだれこみ、分散しなくなり、分類の意味がなくなる)。
一般分類表も、実際の一般書の分類も、いいかげんなものよ。
そんなこといったら、だいたい、東洋医学なんて西洋「分科学」的はおかしいんだから4類になんかおけないのだし。
ゆえに水についてのトンデモ本も水の項目におかれてしまうのがむしろ実務的にはただしく、この本だけ批判されたからとて1類に置いたって、当座のガスぬきにしか役立たんのよ。てか、一般分類が破たんする最初の一歩になると思ふ。
って、この論文の全体わくぐみはまあいいんだけど、やっぱりこの部分がとても気になるなぁ。。。

深夜の追記

もう2年もまえにかきかけ非公開にしていたものを、読めるように追記し、公開してみた。

正しくない言説を載せた本も定位置に置くべき:消極的自由主義の観点から
http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20110530/p1