書物蔵

古本オモシロガリズム

多角化時代の総会屋さん(昭和50年ごろ)

佐賀潜『恐喝(かつあげ)』のモデルさがそうとしたら、これはベストセラーかつ通俗小説なので研究がまるでなく、『文芸時評大系』の索引をみたり、日外の主題書誌みたって作品研究などまるで見つからず、「あたりまへだがコマッタナー(´・ω・`)」と思ふてゐたら、なんのことハない、Googlebookであっさりとモデルが見つかった。

  • 山根次郎「無系譜,ゲリラ化した総会屋(ルポ)」『経済評論』24(10) p.118-127(1975.9臨時増刊)

これによれば、「佐賀潜氏の著書『恐喝』(光文社刊)のモデル人物として一躍有名になった御喜家康正は月刊誌『新評』を発刊しており」とある。なるへそ。

御喜家康正

 御喜家康正(みきや・やすまさ)さんは、1925生、京都府出身と『人事興信録:第24版 下』(1969、p.み36)にある。趣味はゴルフ囲碁とか。記者出身(新大阪新聞)で、『昭和日日』(古川浩)から独立して「『新評』を興し、雑誌経営ではトップクラスにのし上がった」とも(上記文献)。著書もあるよ。

  • アフリカ写真紀行 : 我が魅せられし動物たち / 御喜家康正著. -- 鎌倉 : アフリカ写真刊行会, 1992. 2. -- 112p ; 34cm. ※非売品。静岡県立、東洋英女大院のみ。国会なし。

四天王引退後、無系譜、多角化した総会屋さん

 昔の総会屋は、久保祐三郎、上森子鉄田島将光といったAクラスもほとんど一人で行動していた。それがさいきん〔1975年〕は集団化している。久保や上森のように傑出した才能を持った人物がいなくなり、集団,組織化されるようになったのである。
 そして、ほとんどの総会屋が、新聞、雑誌などを発行し、賛助広告、協賛費名目で企業から合法的に金をせびり取るやり方に変わってきた。
・多様化し複雑化する総会屋
 佐賀潜氏の著書『恐喝』(光文社刊)のモデル人物として一躍有名になった御喜家康正は月刊誌『新評』を発刊しており、上野国男は『大道無門』、島崎栄治は『電子経済』、木島力也は『現代の眼』などを発行している。一流クラスの総会屋が発行している雑誌はいちおう定期的に発行され、執筆者も一流人を起用し取次店を通じて書店で売る形をとっている。
 だがBクラス、Cクラスの総会屋は月刊誌を発行する力がないので、タブロイド版〔判〕の情報紙やハガキサイズの機関紙を発行して、かろうじて体裁をととのえている。
 かつて総会屋といえば、株主総会に出席して、会社サイドで総会の議事を進行させるのがその仕事で、年一回なり、二回の総会シーズンだけ働けばよかった。
 一匹狼の単独行動だからそれで十分食っていけたのである。しかし、社員を抱えて定期刊行物を発行することになれば、年一〜二回の総会シーズンだけの収入では生活できないところから、年間をとおして収入が得られるように、いろいろ知恵をしぼるようになってきたのだ。

概して時代区分を以前と(昭和50年当時の)現在にわけ、総会屋の2類型をだしている。

時代 現れ 事業内容 行動様式 系列 代表的人物
正統派時代 資本主義の裏方 特殊株主、新聞雑誌 一匹狼 あり 久保祐三郎 上森子鉄 田島将
現在 派手な話題 多角化、月刊誌化 会社 なし 嶋崎栄治 松本三郎 日種顕一 御喜家康正

アルプス書房、赤坂書房といった出版社で、立派な単行本を出しているとも。