書物蔵

古本オモシロガリズム

特定案件批判:もちっと、「回答プロセス」を

めでたしめでたし……か?

このレファレンス案件。
http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000014692
ペイトン『卒業の夏』(1972→1990)の解説に、続編として「ベートーヴェンの肖像」というものが挙げられているそうな。その日本語への翻訳がないかという2004年、8年まへの質問。
(見あたら)ないけど、おそらく原本は、"The Beethoven medal" Oxford University Press(1971→1979)、ちゅーのが最初の答えだったんだけど、次の追記が最近あって、翻訳が見つかったということでレファ協にあがっていた。

追記(2012/4/12):雑誌『ミュージック・エコー1973年4月号〜1974年3月号』(学習研究社)に久保田輝男の翻訳(「卒業の夏」訳者)で連載があることが判明した。 (民主音楽協会 民音音楽博物館音楽ライブラリー所蔵、欠号あり) (http://museum.min-on.or.jp/ 2012/04/12 最終確認)

よかったよかった。。。(´∀` )
。。。ぢゃない!!!(*'へ'*)

どーやって「判明した」かが書いてない!!!

レファレンス事例って、その事例だけで終わっちゃえば、ただの贅沢な税金の蕩尽、それも特定個人にしか役にたたんもの*1で終わってしまう。

Peyton, K. M. The beethoven medal. -- japanese translation.
→ ペイトン;久保田輝男訳「ベートーヴェンの肖像」『ミュージック・エコー』(1973.4-1974.3)

こんな1エントリが立っている翻訳書誌があるのか?
と驚いてしまった。
ごく一部にしか所蔵されていない雑誌の内容細目であっても、音楽分野なら何か調べる書誌があるのか?
とか、と喜んでしまった。
音楽分野なら美術のALC総目みたいに、きちんと注記が記入された書誌DBで、グーグルのクロール対象になってないものがあるのか?
とか、とあせってしまった。
(以下、主題要素の順列組み合わせで)とかとか、期待しちゃうぢゃないの。
AはBとワカッタ。
CはDとワカッタ。
EはFとワカッタ。
って、そりゃーワカッタでしょう。けど、ならば、

A’の質問が来たヨ。あゝさうか。
Aと同様に解けばいいのネ。
おなじやり方でA’はB’とワカッタヨ

と、A'→B'につながるようにA→Bの過程(つまり、AとBでなくその中間の→)がワカルように書いてくれねば、Aの案件にしか役立たーずのタダの1案件、1記録でしかありませーん。
今回の案件のように、記事レベルの翻訳文がわかるジェネラルな書誌は、ないんだから*2
「いったいこの追記はどーやって「判明」させたのだろう!(o^o^)o」と、喜んで読んでしまうぢゃないすか(*'へ'*)
まだ見ぬ未発見ツールがあるんぢゃないかとかとか、期待しちゃうぢゃないの。
もし、調査者がたまたま民音の書庫内でブラウジングして見つけたのなら、そのように書かなけりゃあ。
ないならないで、

まだブラウジングは必要なんだ! 開架ばんざーい!

っていえるのに。
あるいは、物知り(主題専門家)に直接教えてもらったなら、そうと書かなけりゃあ。

まだこの分野は主題専門家にたよらねば! レフェラル・サービスばんざーい!

っていえるのに。
のにのに。
過程が書いてないから、それもわからない。

民音への導入もよろしからず

それに、民音のサイトが紹介されてるけど、民音のサイトあるOPACからは、雑誌の所蔵も、トーゼン雑誌の内容細目も検索できないようなのだ。どーやら民音の雑誌所蔵は、いまだに冊子の『音楽関係逐次刊行物所在目録(1992年版)』で確認するしかないらしーのだ。

図書・録音資料 ・・・ パソコンで検索し、請求記号で請求
映像資料 ・・・ 冊子目録で検索し、請求記号で請求
楽譜 ・・・ 目録カード(一部パソコンでも可)で検索し、請求記号で請求 個人全集・叢書は「作曲家全集・楽譜叢書所蔵リスト」で検索し、請求記号で請求
逐次刊行物 ・・・  「音楽関係逐次刊行物所在目録」(音楽図書館協議会編)で検索し、誌(紙)名と年月号で請求
http://museum.min-on.or.jp/library1.html

あんな書き方されちゃあ、

エッ!エッ!!!
まさか民音OPACから音楽専門誌の内容細目(目次)が引けるのっ!!!?

と喜んぢまうぢゃないの!!!
(って、ぬか喜びしたのはまさしくわちきだわさ。だからこのエントリが立った)
まあ、民音OPACが、雑誌のチェックボックスがついてるのに雑誌を検索できないということがわかった、ちゅーことが、わちきにとっての得にはなったけど。。。
レファレンス記録って、やっぱり答えとほぼ同様に「回答プロセス」が重要なのだよなぁ。。。

追記

この事案の答えが8年ぶりに見つかったこと自体は、そりゃあ喜ばしいこと。
けどプロセスがないと、人件費に税金何万円もかけて1人しか喜ばせられないぢゃない。
もしプロセスがあれば、もしかすると最初のこの案件には数万かけたけど、あとは利用者個人が勝手に、つまり人件費タダで日本国が滅びるまでリファーできるようになるかもしれないぢゃない。
ツールがないならないと書いてあれば、ああ、当面、1件あたり数万の人件費がかかるなぁ、こりゃあやっぱすコストパーフォーマンスの点から、UNESCOのインデックス・トランスラショナムを引くぐらいしかできんわい、とあきらめもつくぢゃない。
↓これがユネスコ翻訳書誌 1970sあたりからしかデータがないけど便利だよ
http://www.unesco.org/xtrans/bsresult.aspx?a=Peyton%2C+K.+M&stxt=&sl=&l=jpn&c=&pla=&pub=&tr=&e=&udc=&d=&from=&to=&tie=a

なればこそ答えと同様に、プロセスをセットにしてほしいのだ。
ちなみに、あれみました、これみました、って主題書誌みたいなもので長く書くものが、とくに見当たらなかった時の事例でここ数年増殖したけど、あれ、ダメね。
どういう方向で考えて何を見たのかがないと、たくさん見たって、頓珍漢なものたくさん見てたらどーしよーもな。それに他の館のモデルとしても解釈不能なんだよねー。

追記2

じつは、レファ協の事例がきちんとプロセス重視になっても、あるまだ足りぬあるものがある。それは部分的にはすでに存在しているのだが。。。

*1:だから民間サービスになるか、受益者負担が求められるようになる。

*2:理論上は、国会図書館のデジタルナントカっちゅーへんてこな名前のDBがその機能を果たす予定である。理論上は。