書物蔵

古本オモシロガリズム

昭和32年の古書月報から戦前古本屋界メディア状況を探る

『古書月報』100号1957年に次の冊子の書影がある。
古書籍商組合会報 第壱号 大正十一年一月
川島五三郎「わが組合初期の月報について:月報を中心とした組合黎明期」 『古書月報』(100)p.5-8(1957)によれば、市川円応(市川書店)が家蔵していたもので、ほかにないという。
ところでわちきはこれを1冊持っている、といっても複製本だが、解題がついているわけでもなく、これを読むことによって、この冊子の意義付けがわかる。
「機関紙をめぐる座談会」p.9-13もオモシロ。

都崎 この月報の前に、勿論私が担当する前だが、パンフレット式のものが出ていた。それはたしか戦時中から戦争直後にかけて出ていた筈だ。

瀬田 戦前の機関紙はよく読まれていたのですか?
住沢 大体現在と同様だったと思うが、発禁本や思想関係の取り締ま本などその都度掲載してあったので必要に迫れて読んでいた面はある。

戦後の月報は古書市場に出るんだけれど、戦前のがほとんど出ないんだよなぁ。もちろん揃いが古書会館の資料置き場にあることはつかんでいるんだけれど、わちき古本屋ぢゃないので、よう見れん。
和田清「小川町夜話」p.17-19にも戦前の記述がある。

当時は出版法上取締りもやかましく、毎回二部添付で出版届を内務省に提出、定期刊行なので時の安達内務大臣から、毎回届け省略の許可書を特にもらつていた。

へぇ。出版法の雑誌だったのだねぇ。

震災
T13.9 再刊。甲府市の印刷所で
T14.1頃 印刷所、早稲田。 「菊版二ツ折四頁」
S6 24頁建
S17 1600部
S18 6000部 第二次全連結成のため 組合員数5860人(S18.1)
戦時中一時中断
S21-S22.2 謄写刷り3回
S22.5 復活第一号

この和田さん、結構おもしろいことを書いていて資料的にも役に立つ。たとえば、昭和5年前後から古書籍商業界で高まった書誌研究、愛書趣味への興味は、それこそ『書物春秋』や反町の『玉屑』などが代表としつつも、それ以外の、同様な研究同人誌をあげているのがありがたい(ご本人が持っていたのか)。

本郷 金子居水 読書月報
   同    古本タイムス 昭和七・一
浅草 伴天連書房 読書月報 〃
中野 足立 山手書好会々報 八
紙魚の会 紙魚 八
杉並 本多徳治 本道楽 昭和七・一
下町睦会 下町睦会報 〃
河村、松本 もくろく倶楽部 〃
河野貞三郎 東京古本相場通信 昭八
同 日本古本新聞 〃九
神田 東条書店 ミネルヴア 〃十
日本古書通信社 日本古書通信 〃九
小石川反省堂 神と寺詣り
以上のうち、タイムス、新聞、通信等はタブロイド版、本道楽、もくろく倶楽部、紙魚タブロイド二つ、読書月報、下町睦会報、神と寺詣り、書好会報、ミネルヴアは菊版今のA5判で、殊に後の二誌は二四頁や三二頁何れを見てもそれぞれ魂を打ち込んだもので…

しかし、これらのほとんどがどこにも所蔵されとらんというのも。。。
また、研究欲が著書に進んだものとして、単著を出した古本屋何人かに言及しているなかで、

これも戦後廃業されたが、自由が丘の十菱愛彦氏は小説「愛の路は寂し」を出し、雑誌にも常に執筆して居た

とあり、トービス星図(せいと)がここにもニヤニヤ、としたことであった。日本で最初に古本屋小説を開発したトンデモ作家、ぢゃなかった占星術師トービス(じゅうびし・よしひこ)研究しちゃおうかすら。