書物蔵

古本オモシロガリズム

「古本大学(ふるほんだいがく)」という表現は戦前から

戦前にもあった「古本大学」

不図、古本大学っていつごろから言ったんだろと思ひて調べてみたらば、にゃんと! 戦前からの用例であることがわかった。ちなみに「古本・大学(こほん・だいがく)」は全然違う意味になっちまうから要注意。

  • 古本大学出版部 編. 法制小典. 古本大学, 大正11. 251p ;特100-274

古本大学は何者ならんとデジデジをひもとくに、奥付に編集兼発行者は「大阪市南区難波元町二丁目五十六番地 大澤安吉」となっている。発行所は「大阪市南区難波新地四番町三番地 古本大学」となっている。いまググると、『大阪人名資料事典』 - 第 3 巻 -日本図書センター, 1959 206 ページに大沢につきなにか載っているらしいけれど、とりあへず序文をみると、

大澤鉄面はおなじみの古本大学の主人である、彼は本屋である外〔、〕兼て彫刻の余芸を有し

と、「法学士千山萬岳樓主人」(おそらく河上肇*1が序で編じゃのことを紹介している。

「コホン ダイガク」はゴ カンベン

あとこの団体、おそらく、大沢の経営せる古本屋の屋号だろうが、この国会さんの典拠における読みが、「コホン ダイガク」となっているのは、まちがひといってよいだらう。

ID
    00389229
標目(xl:prefLabel)
    古本大学 (コホン ダイガク)
関連リンク/出典(skos:exactMatch)
    NDL|00389229 (VIAF)
出典(dct:source)
    法制小典 (請求記号: トク100-274)
注記(skos:note)
    遡及入力典拠
作成日 (dct:created)
    1995-11-22
最終更新日(dct:modified)

http://id.ndl.go.jp/auth/ndlna/00389229
出典に『法制小典』が記入されとるけど、これはきっと、漢字形の出典で、読みの出典ではない。それに注記に「遡及入力典拠」とあるのは、同時代に作った典拠ではなく、あとから(おそらく70年後ぐらいに)創ったものだから、漢字形はともかくヨミは結構怪しいとみるべきだろう。
典拠のヨミ、とくに人名はさまざまな思惑から論争の種になることがあることも知っておいてよいだろう。

「金鶴泳」の読み方 - 猫を償うに猫をもってせよ
http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20121103
http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20121109

本の中身

本の中身は法令約20タイトルの法令集なんだけど、商店主、とりわけ古本屋が知っているべき古物営業法とか出版法とかの法令ばかりで、大沢=古本屋との憶測を強めるものである。大正期には『古通』がまだないのだけれど、唯一某大学が所蔵せる『古書月報』あたりを見ればわかるかしら。

*1:なんとこの別名についての考察があり、それを読んでみたらやはり別人説にわちきも傾く。