書物蔵

古本オモシロガリズム

ギャラリーフェイク

主人公フジタのライバル(?)三田村女史のところに、ある画廊から佐江木晋三のレゾネを作ってくれという依頼が舞い込む。
フジタに贋作商をやめてほしい三田村は、フジタに協力を依頼。裏の手なども使ってコレクターに協力をさせるフジタ。

レゾネとは
画家の全作品目録(カタログ)のことである

と、物語の語り手の説明がまず入る(p.147)
そして次のページで、そのフジタが助手サラに、まるまる1ページつかって説明。
んー、セリフばかりの説明的なページだなぁ。

  • 細野不二彦「第5話 Making of the“raisonne”」『ギャラリー・フェイク vol.10』(小学館、1997)p.148

欧米ではな、たいていの作家について”レゾネ”が発行されているのさ。
コレクターや賀正が美術品の売買の前に”レゾネ”でデータをチェックするのは常識だ。

しかし、こと日本の作家に関しては、”レゾネ”の刊行は著しく遅れている。
岸田隆盛、小磯良平、梅原隆三郎といった大家ですら、”レゾネ”が存在していない。

それはなぜか?

”レゾネ”の製作には、作品の所有者、つまり画商やコレクターの協力が不可欠なのだが、
これがネックとなっている!

まず、画商の中には真贋のアヤシイ作品を扱っている者も多い。
ウチほどではないにせよな。
フフフ…
”レゾネ”によってそれが明白になるのはいかにもマズイのさ。

そして、コレクターについてはお粗末な人間が多すぎる。
買った美術品は自分の独占物だと思っているのだ。
むろん、撮影や調査に協力する必要など感じていない!

ん。
こんな感じだったっけか。もう10年くらいまへに読んだからか、ぜんぜんおぼえてをらんかったのぢゃ。残念ながら初出の書誌は奥付ページになし。さういへば、今年一月の「マンガ文献研究」の座談会でだったっけか、ナンダロウ氏がマンガの初出について、単行本に載せている出版社は限られるといっていたのは。ん? いつものやうに森さんだったかな???
それはともかく、すでにここで、「カタログ・レゾネ」でなく「レゾネ」だけで意味が通じるように書かれており、おそらく漫画化細野が取材したであろう1990年代美術業界では口語で「レゾネ」と言っていたらしいことがわかる。