書物蔵

古本オモシロガリズム

年鑑とは何か:先行文献の読解から

http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20110627/p1
のつづきね
年鑑についての本というのは、森さんも指摘せるように、代表は『日本年鑑総覧』(1987)である。がしかし、森さんのいうように、この本、概念規定をせずに、川上和秀という書誌研究会のメンバーが「「年鑑」または「アニュアル」と題される刊行物」を集めたので、いまいち概念整理に使えない。排列も本文を分類順にすべきなのに、タイトル五十音にしちまって…。網羅性はそこそこあるのに、なんだか仕上げがいまいちなレファ本なんだよなぁ。特に年鑑の歴史的経緯がさっぱりわからん。

今の定義に実態が定着したのは昭和初期か

なれば、とて『研究調査参考文献総覧』波多野賢一,弥吉光長(朝日書房, 昭和9)を見たら、年鑑とは云々と割とフツーのことが書いてあったんだけど、「独逸は統計が盛んであるがこの種のものは割合少ない」とあり、昭和前期の段階で、波多野らは、統計書とはちがうものとして年鑑を意識していたということがわかる。また年鑑の項には一般年鑑しかなくて、あたりまえのように専門年鑑は各ジャンルに排列されている。つまり昭和9年段階で日本の年鑑はいまの形にほぼ定着しているといえる。

年鑑とは(いまの定義)

いまの本で年鑑の定義でいちばん面白かったのは、このまえクサしちった根本先生のもの。

いずれは百科事典や専門事典、便覧に圧縮して収録されるべき情報であるが、まだ歴史のふるいにかかることの時間を経過していない年度単位の情報を集めた便覧の一種が年鑑 (『図書館情報学ハンドブック』1ed. p.382)

図書館情報学ハンドブック』2edでは記述はフツーにもどってて、ただオモシロいのは「にているが、アルマナックが歴史的な情報を含むのに対し」云々とあったのがほかのフツーの定義とちがかった。
丸善の『図書館情報学辞典』では「年鑑 yearbook; annual」と立項があり、「過去一年間に生じた変化を簡潔に記述し、統計や名簿等を添え、特有の形式で掲載する年刊の逐次刊行物で」とあるのがフツー