書物蔵

古本オモシロガリズム

ドンザッキー伝を一気に読了

これね
isbn:978-4480816702:detail

構成上の問題はかかええとるが、布川カクザエモン伝の10倍オモシロい!
勝因は…
日記ね
ドンザッキーのもとで下働きをしとった少年の日記が、なんの因果か青木さんが古書市で競り落とすことに(ってか、氏は無名人の日記収集家であるのだった)
その無名の少年は、もともと冨山房で丁稚をしとったんだけど、詩を書くからという理由で首になってしまふ…(*´д`)ノ
そしてころがり込んだのが詩人、ドンザッキーのとこ
出版者詩人のために原稿をあつめたり広告をとったり、あまつさえ印刷代をたてかえたり… 支払い猶予のお願いもこの少年がやらされるハメに…
ヲイヲイ! なんだかダダイスト詩人ドンザッキーのイメージが…(σ^〜^)
それはともかくこの本ハ。
ドンザッキーこと、都崎, 友雄<トサキ, トモオ>(1901-1991)の履歴を著者の青木正美さんが調べる過程を実録風に書いたもの
古書業界関係者や都崎自身、都崎の子どもなども出てくる
日本人はビンボーだったのだなぁと思うよ

以下、気づいたことをメモ

けっきょくみやこざき、なのか、とざき、なのか、つざきなのか、読んでもわからんかった。これはこの本の構成が、ドキュメンタリーっちゅーか、私小説風になっとるゆえ。でもまぁ末尾に年譜があるので最低限の資料性は担保されている。
著者の青木さんのことを(その私小説風の書きぶりゆえにか)自己顕示欲の塊と悪評するむきが古書業界内にあるといふ。
あと、この本の裏主題は、古書店vs.貸本屋という対立図式。とりわけ戦後、ドンザッキーは貸本業界の理論的指導者になったがゆえに。
貸本といへば、青木さんは主に古本業界で情報収集をしてをって、それゆえに集まる情報もあるんだけど、ぜんぜん逆に、貸本業界には情報をもとめておらんのが不思議。話の流れでいえば、とくに今でも残ってる(なぜだか埼玉にある)東京(都)読書普及商業組合(東読)に資料がなんかのこっとるのではないか、と強く思うですよ。実際、最後のほうにでてくるドンザッキーの手稿は、わちき思うに東読の機関紙(東読協だより???)に書かれたものと思うし(゚〜゚ )
この本でも、昭和30年11月創刊の東読機関紙『街の図書館』創刊号が出てくるが、この貸本屋ってーのが、これまたこの時期の図書館業界のライバル産業で、かの中小レポートにおいても、館界として貸本業にどう対処するかということが立項されとる。
『街の図書館』については、ネットで言及しとるのはわちきだけといううわさも
http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20100715/p1
代貸本屋研究ってまだ集大成されとらんのよねー。芝野先生の『書棚と平台』にあるレビューがいちばん全体感をつかもうとしとるとは思うが。 
・白痴の夢 / ドンザッキー. -- ドン社, 大正14
これが実は復刻されとるらしいこと。国会にあるものは原本なれど、請求記号が特100sなのでこりゃあ大正期乙部だね。近年まで見られなかったもののやうだ。
復刻版はあわてて国会OPAC見るも出ず。ゆにかもでず。
・白痴の夢 : ドンザッキー詩集 / 都崎友雄著. -- 限定復刻版. -- シンコー企画, 1991
ごく一部の大学図書館にあるようだ。
けど、もちろん「日本の古本屋」で買うこともできる。1万円前後
ローマ法の原田慶吉は自殺していたと昭和25年の古書月報に都崎が書いているといふ。