書物蔵

古本オモシロガリズム

アステ ASTERISK. 3 号(1985.11.25 発行) 特集奥付

もり・やうすけ氏から久しく以前から存在をしらされるも、見たのはさきほど。
コピーを入手したが、まだセットだがネットで売っているとて、注文してみた。はっきりいってこの雑誌は色刷りですごい。
また、奥付研究としても、ほぼ唯一の雑誌特集であろうし、さすが布川カクザエモンと思った。

  • 衆妙の二字/永田耕衣 ※特集と無関係
  • 奥付雑考/寿岳文章 ※昭和9年の出版法改正に皇室への冒涜を禁じたことが昭和前期の状況を生み出したとして、「旧出版法の申し子みたいな奥付をいまだに温存して平気な出版界の慣行」が「私の癇にさわる」とぞ。ただ、どうやら1980年代当時の奥付がデザイン的によくない、といいたいらしい。主題と関係なく、憲法の話や中曽根政権の反動性、また当時、出版界のはやりだった酸性紙問題なども。
  • 表題紙とコロフォン/吉村善太郎 ※洋古書のコロフォンの話。
  • 和漢古典籍の刊記/米山寅太郎 ※近代の話はなし。 
  • [インタビュー]奥付談義/布川角左衛門+加藤美方 p.16-19 ※特集中、一番重要。
    ・奥付位置規定のはじめ:発行者は「氏名、住所及び発行の年月日を文書図画の末尾に記載すへし」と規定した明治26年出版法により、「末尾に」と「場所が明らかに指定された」と指摘。
    ・「印刷日=納本日」説:印刷日は「印刷そのものの終了日と解されがちですが、事実はそうではないのです。その印刷日が内務省へ納本した日であった、それから中三日の間に、内務省けいほ局図書課では検閲を行ったのです」と。しかしわちきはこれに相当の疑義をもつなぁ。ひとつには「何月何日納本」という刷りこみが実際にのこっていること。
    ・奥付の定価表示について、M8改正出版条例20条による朱印が最初としつつ、「これは販売上のためではありません」とし、販売のための定価表示は「明治十年代中ごろから二十年代にかけてかと思われます」という。
    ・定価表示の位置移動:定価→奥付という「常識は1970年代になって崩れ」、「カバーとか外函とか帯に移される例が出てきました」。
    ・(C)まるC:万国著作権条約が発効した1956.4.28以降。「それ以前にはありません」。
    ・貼り奥付:「定価その他、記載事項を変える必要の起こったりした場合の一種の便法」。対義語「刷り奥付」。
    ・ふりがな:「図書館などの要請として、奥付の著者名にふりがなをつけることがありますね」。
  • 恋する女の悩み=小野小町走り書/山本健吉
  • 奥付の限界/谷沢永一 ※大半が「かじんのきぐう」の事例紹介。奥付が「カバーの折り返し部分」にある例が「徐々に増えつつある」という指摘。「大学などの研究機関」の、3月31日発行のものについて「予算制度に縛られているため」という指摘。「著者紹介の欄」は「奥付の上部余白やカバー等に」ある。奥付の著者名には振り仮名をつけるのが望ましいという提案。
  • 検印紙事始=証紙(印紙)のいろいろ/稲岡 勝 p.24-25 ※図版がカラーでたのしい。
  • コロフォン(刊記)の言葉/庄司浅水 p.26 ※うーん、みるところなし。
  • 奥付―本の存在の証し/戸田ツトム p.27 ※うーん、文章がおどってる。
  • [座談会]創る人、使う人/青葉益輝+浅葉克己+味岡伸太郎+篠原栄太