書物蔵

古本オモシロガリズム

女給・木谷絹子はやはり。。。

愛の空間 - 272 ページ 「ここで、木谷絹子の『女給日記』一九三〇年)という本を、紹介しておきたい。銀座のカフエ」→ほんとに例示のみ。調べはない。

  • 木谷絹子 著. 女給日記. 発禁改訂版. 金星堂, 昭和5. 272p ;個人著者標目 木谷, 絹子 || キタニ, キヌコ

これについては「部数事典」p.354に次のようにあり。

1930.11.21 金星堂 2500部 無 1930.11.21

国会本は元版と改訂版があり、元版は内務省副本。ちなみに上記の部数事典凡例を仔細にみると、発禁日と出版日が同日になっとるものの多くは排列上便宜的に発禁日になっとるそうで、実際、現物を見ると次のようになっているよーだ。

特500-729
表紙 388(左上ナンバリング) 五年十一月二十一日禁止/副本(左下ペン書き)
標題紙
奥付 昭和五年十一月廿十日印刷 昭和五年十一月二十五日発行 

改訂版

特235-212
表紙 発禁改訂版 ラベル:334-74(乙部の函架記号)
標題紙 なし いきなり本文 帝国図書館蔵書印 受入印:帝図/内交・昭和五・一二・一二
奥付 昭和五年十一月廿五日印刷 昭和五年十二月[五]*1日発行

『女給日記』出版日誌(上記から推理)

1930.11.20 金星堂が2500部を印刷製本。
1930.11.21 金星堂が2部を納本。というのも25日発行予定だったので中3日を検閲にあてるから。この月388番目の普通出版物として内務省図書課が受理。内務省図書課が発売頒布禁止の行政処分を決定。いわゆる「即日禁止」。
1930.11.21-25 図書課処分を通知。2500部のうち756部を差し押さえる*2。金星堂は分割還付を願い出て差押の還付を受ける。
1930.11.25 金星堂が756部を「発禁改訂版」として一部ページを再印刷、再製本。ただし内閲*3で何か言われても対処できるよう、11/29でなく2日たして、12月初頭に納本することに。
1930.12.1 納本。直前に「五」の紙を奥付日付に貼る。不問に付される。
1930.12.5 発売頒布開始。

https://twitter.com/kureichi/status/216398708156268544

木谷絹子

んで、当時、木谷絹子は実在の人物かと思われたこともあった。

  • 文芸ノート / 板垣直子. 啓松堂, 昭和8  「女給の生活を日記体に綴って人気をえた作家も出た。」

しかし谷沢永一は架空の人物としており、おそらくそれが正しい。
またこれは付随的に解った一般則なのだが、内務省図書課、つまり出版行政の対象としては、著者に基本的に興味がない。ってか出版社を抑えられれば流通をずっと効率的に止められるので。もちろん図書課でないところが思想対策としてというのであれば別だが、それは結局「出版警察報」などには出ない。「思想月報」とかになるだろう。

書誌めも(2013.5.24)

  • 木谷絹子 著. 女給日記. 発禁改訂版. 金星堂, 昭和5. 272p ; 個人著者標目 木谷, 絹子 || キタニ, キヌコ
  • 部数事典 p.354 1930.11.21 金星堂 2500部 無 1930.11.21
  • 特500-729 表紙 388(左上ナンバリング) 五年十一月二十一日禁止/副本(左下ペン書き)

標題紙 奥付 昭和五年十一月廿十日印刷 昭和五年十二月二十五日発行 

  • 特235-212

表紙 発禁改訂版 ラベル:334-74(乙部記号) 標題紙 なし いきなり本文 帝国図書館蔵書印 受入印:帝図/内交・昭和五・一二・一二 奥付 昭和五年十一月廿五日印刷 昭和五年十二月[五]日発行 

*1:活字で5を印字した四角の小紙片を糊づけてある。内務省窓口で直した場合はこれは不可能だろう。また手書きで直したようなものは印鑑が捺されていることが多い。

*2:出版警察報28p.91

*3:当時はしていなかったと思うが。。。