書物蔵

古本オモシロガリズム

なんだかモウ、すごいのである…(満洲に消えた楠田五郎太 3)

金沢文圃閣さんから12000円にて入手した上記パンフレットをやうやく一読。
動く図書館の研究 / 楠田五郎太. -- 研文館, 昭和10
なんだかもー、すごいのである。
血気盛ん、鼻息荒らし!
タイトルからして「ブック・モビル(自動車図書館)」のことかと思ったら、ちがかった(^-^;)アセアセ
楠田がつとめた市立岡山図書館(大7創立。ほかにも岡山県立があったので注意)での実践をもとに、ライブラリー・エクステンションについて述べているもの。
「田舎都市に於ける群小図書館」は、「東京式図書館」をまねてはいけないとか、
「閲覧者を動すのではなく、図書館が動く」(p.22)必要があるとか…
具体的には、婦人を対象にした貸出活動のすすめである。

貸出し図書館は「貸本屋」と文句を言われるのは戦前からだった…

嘗て岡山婦人読書会*1貸本屋だといふので大変な批難を買つた事があつた(略)いったい図書館が貸本屋であるといふことが何故悪いか、却つて我々は貸本屋の活動的システムから多くの示唆と暗示とをさえ受けるではないぁ、そして我々は進んで貸本屋であることを希望しなければならない(p.29)

「図書館がデパートで館員が店員であるといふ声は既に高い、我々はこの声を蒙一歩進めて魂まで商人になり切らねばならない。」(p.34-35)
そうなのである、館員は官員でなく、商人にならねばならんのである。もちろん、「商人」というのは、当時(って今でも?)若干の侮蔑的ニュアンスがあるコトバであり、それを自ら使っているわけである。
んー、こうしてみると、library extensionというよりも、ある意味、戦後の日野図書館のやったことと同じことをやったということですなぁ(*゜-゜)

序文とかもすごっ!

高橋勝次郎(1897-195?朝鮮総督府とかの図書館員)の序文
改正図書館令(1933)により、対象を民衆にまでひろげたが、その具体化として楠田の「動的図書館研究」があるという。楠田の名前は「永久に図書館史に記憶されるべき」であると。
村上清造(富山のエライ図書館人)の「推薦の言葉」もすごいよ(゚∀゚ )

図書館は動くなんて商人の様な事が出来るかといつて事務室に閉じ篭って居る人は読まれなくてもよい。(略)
時代は動く!!/弱冠何事かあらんと思ふ人は/既に老境にある事を自覚せられよ。
感激の余り一言述べた次第である。喝!!

ヒョエー(・o・;)
本としては記述の重複が多かったり、論の展開がいまひとつだったりするけど、オモシロなことがいろいろ書かれているですよ。めづらかオモシロ図書館本に認定!`・ω・´)o

*1:「岡山婦人読書会」(1922.4設立)は市立岡山図書館の貸出部門。附帯事業として有料貸本の形式をとる。詳細は本書に。