書物蔵

古本オモシロガリズム

青木さんの「南京図書大」

帰りがけ、最後に立った書架(真ん中通路のいちばん帳場寄り)の目の前にあったのは、
口籠り歌 / 青木実. -- 作文社, 1973
口籠り歌. 続 / 青木実. -- 作文社, 1982.3
旅順・私の南京 / 青木実. -- 作文社, 1982.12
の3冊、それも! どれもたったの210円!

うっひょひょーいY⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒(。A。)!!

『口籠り歌』正編は重複本。続ははじめて。あいかわらず古本短歌がある、って、そのことよりも!
『旅順・私の南京』ってエッセイ集ン中に「私の南京」ってエッセイがあって。
これが、また!
図書館史ネタどんぴしゃ!
それも。
かの「南京図書大略奪(偽)」事件ものだったのだ!`・ω・´)oシャキーン

日帝に奉仕するNDC?

実際には大略奪はなくて、あったのは大接収・大整理であったわけだが…
その大整理に従事した青木実さん(当時・大連図書館司書)の回想記がこの「私の南京」という短編。
汽船にのってチンタオ、上海、それから汽車で南京へ入る。
そして、あつめられた80万冊の図書大整理に入るのである。

この日〔1938.7.2?〕、話合いで、大体の整理方針が定められた。山積みの本を、とりあえず日本十進分類法(NDC)の10部門に分けて仮書架に収めていく。分類は一々紙に書いた本にはさんでいくのでは能率が悪いから、表紙に白墨で0から9までの該当部門を書いていくということになった。(p.32)

やはり、十進分類は、「日本」十進分類であった…(*゜-゜)
赤旗』記事で、二桁の数字を書いていったと青木さんが証言しとるので、「NDCではなかろうか」と思っていたんだけどあたったよ(^-^*)
この集められた本は、大方がそのまま汪政権の文物保管委員会の蔵書となっていくわけ。
大整理の後の大返還(汪政権だけど)
そこで、

ん? もしかしてNDCは汪政権の図書館に引き継がれちまったのか?!
だとすれば!
さすが、<日本>帝国主義に奉仕する<日本>十進分類!!!*1

と、オモシロな妄想をたくましゅうするも、じつはじつは…

従来、日本式分類であったものを中国式にあたらめた(要旨)

と『行政院文物保管委員会年刊 民国31年』(1942)にきちんとある(p.55)。だからこそ、この図書館の蔵書目録*2は中国式十進分類で排列されとるのだ!
「漢奸」(蒋や中共から見れば、の話)といへど、ナショナリズムはあるのだ。
二重三重に錯綜したナショナリズムから「南京図書大略奪」という架空事件ができあがっていくのは、これからあと40年もあとの話。

稲村テッチャンキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!

わちきは文学を解さんので、『続口籠り歌』の短歌がの出来についちゃあワカラン(゜〜゜ )
でも、この本に挟まってた紙片の価値はわかったよ!
画像がそれ。
ある人に見せたら、

稲村さんって、年取る前は読める字を書いてたんだねぇ(・o・;)

だってさ(・∀・)
(南京陥落の日にUPす… なむなむ)

*1:なーんて、いかにも現在ただいま日本図書館史研究界で世間様から周回遅れて流行ってるような、お馬鹿なことはいいませんですよー(・∀・)/

*2:図書専門委員会図書館図書分類目録. 中華民国32年11月 / 行政院文物保管委員会図書専門委員会. -- [中華民国行政院], 中華民国33年