書物蔵

古本オモシロガリズム

ウィキペディアで出てくるものは… いや、出てくるもの「こそ」

わちきの今の趣味は日本図書館史。
で、こんなのを趣味にしとるもんはそうそうおらん。
で。しばらく前に筑波大の途上系の先生が「参考にはしても引用するな」と朝日に投書していたウィキペディア。これの、「国立国会図書舘」の項が、異常なまでに詳しい珍現象を読み解いてみたい。

珍現象

簡単に数量的な比較をしてみた(2007/08/07調査)

項目名 字数
国立国会図書舘
18182字
財務省(日本)
4752字
衆議院事務局
899字
参議院事務局 
1004字
東京都立中央図書館
651字
アメリカ議会図書館
5396字

省のなかの省、財務省の4倍、国会3機関でも事務局の18倍、大型地方図書館と比べると27倍の記述量である。
国会図書舘は財務省の4倍重要で、衆参の18倍重要で、あのLCの3倍重要な機関なのかしらん(゜〜゜ )
ウィキペディアを、ボランティアによるただの「百科辞典」と捉えると、これはなんとも珍なる現象。
けれど…

ウィキペディアサブカル大百科

べつにウィキペディアがダメというわけじゃない。ウィキペディアが出てきたからこそ初めて判るということも多い。例えば、アニメや漫画の作品解説については、ちょっと冊子の資料じゃわからないことが微に入り細をうがち記述されている。
そう。ウィキペディアの利点は、サブカルに強いことにある。逆に言うと、

ウィキペディアで詳細に記述されている項目は、本質的にサブカルであるか、あるいは、そうでないにしても、おたく的ファンがついている事象

だということになる。アニメや漫画は本質的にサブカルとして、鉄道事業や軍事は、それをサブカルとして消費するオタクふぁんがたくさんいるわけ。

ファンは結構だが

わちきはもちろん国会図書舘の本質は、文化・政治のメインストリームに資することであろうと。いいかえるなら、鉄道や軍事同様、サブカルではないものとして機能しているハズであり、そう機能すべきハズと思う。
が。
このウィキペディアにおける珍現象を見るに、どうやらサブカルとして消費したいオタクふぁんが結構いるみたいね。
もちろん、ファンが付くのは良いことで、米国図書館学では「library friends(ライブラリー・フレンズ;図書館友の会)」(図書館のファンクラブのこと)という術語まで用意して納税者・理事者や利用者を組織しようとしてきた。
ただ今回わちきが案ずるのは、おたくな人が「中の人」っぽいことなのだ。

見つけた変な記述

たとえば、今は削除されてるから(表面上)見えないけど、「2007年2月21日 (水) 00:39の版」にあった「著名な在職者」に上げられてる連中ってのがずいぶんと偏った選定になっとったね。
中のオタクが、むきになって書き込めば書き込むほど、NDLがただのサブカルに見えてきてしまうという皮肉。
ネットだけに頼らないきちんとした立法考査とか、全国書誌機関はTRCとちがうねとうならせるような品質の書誌データとか、さすが保存図書館としてカバーはおろか帯までも保存しとるよ、とか、そういったことに熱中するのが中の人の熱中すべきことなのでは。
そういった本務より、ウィキペディアに熱中したり、あまつさえへんてこなお絵かきに熱中してみたりとか、とゆーことがもし仮に万が一あるとすれば、これは困ったことなのではでは。

追記

項目の過去ログと書き込んだIPアドレスをたどったら(ウィキペディアにそのような機能がある)、誰が書き込んだか推論できた。もと館員さん。なんとまあ、自分の項目をウィキペディアに載せとるね。