書物蔵

古本オモシロガリズム

消えていく本屋の話:志水松太郎の大日本出版社峯文荘

shomotsubugyo2007-02-15

不思議な出版人:志水松太郎

出版社のやり方についての本を、自分で書いて出版することから出版社をはじめるという、珍妙な形で出版をはじめた志水松太郎。彼の興した「大日本出版社峯文荘」(当初は峯文荘)についてちょっと調べてみた。
戦前の『出版年鑑』の名簿には当然、載っていて、『国民書道』なる雑誌もだしていたとある。
OPACで出版者から検索すると、わちきが拾った

が最初の出版っぽい。そのあとに南陀楼綾繁氏が拾った

で、なんとまあ半自叙伝まで出している。

  • 『独立苦闘涙の三年』(昭15)。

すごい題名。題名からいって、どっかの出版社に勤めていたのだろう。この本は大学(webcat)にはみあたらず、ゆにかネットで国会と京都府にあるとわかる。ちょっと正統からハズレると、大学図書館じゃ調べモノはできんのだ(´・ω・`)(でも公共図書館だともっとできんが…)
途中で関係者にわたりとつけたとみえ、書道関係の本をだして順調に社業は発展したよう。雑誌もそれ関係で出せたのだろう(この雑誌の所蔵先は不明)。よく古書展にころがっている『日本倉庫史』って本(分厚くてめだつ)もここが出したんだなぁ。昭和19年4月の『資料探訪』が最後の出版?
戦後はぷっつりととだえ、『出版年鑑』にもみあたらず。
敗戦のどさくさに消えた志水松太郎はその後はわからない。

弱小出版社史の調べ方(とっかかり)

あくまでとっかかりにすぎないんだけどね。
ひとむかし前は、書誌データベース(まぁOPACとおなじ)も出版者名から検索することはできなんだ。ましてやカード目録においておや。
でもネット時代の我々は、ひとむかし前の人はできなかった出版者名からの検索ができるようになった。これにより、どんな弱小出版者でも、何を出していたかがたちどころにわかるように。これはすごいことですよ。
それまでは岩波とか功なり名をあげ、さらにそのうちの、社史なんかを出してみる奇特な出版社しか社史ってもんはわからんかったですよ。

社?者?

ああ、そうそう。出版「者」ってコトバを使いたがるのは日本図書館関係者。出版業界や一般人は出版「社」というコトバをつかう。そのココロは、個人でもパブリッシャー(publisher)になるから、ということらしい。きっと英米目録法をニホンゴに訳すとき、おそらく戦前にそんな議論をしたのであろうなぁ。
しかし両方とも発音はまったく同じだし… やっぱり「ことばなおし」すべぇか? 「ふみをおおやけにするもの」とか

追記(同日)

いやーびっくりした
再度ググったら、ヤフオクに手がかりらしきものが。
この出版社が出していたpublisher's seriesの『国民書道講座』の一冊が売られており、画像入りで紹介されているんだけど、これにチラシが挟まっているという。
http://page2.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/b68489672
「企業整備に依る廃業について」
と題されたそれは、紹介者は「大日本国民書道会」からのお知らせとするが、内容的にはこの出版社のようにも強く思われる。
この本(正確には書道の見本帳・法帖)はどこにも所蔵されておらないやうだ。図書館だけではわからんことも(あたりまえのことながら)あるのだのう…

追記(2日後)

画像は、昭10からグラビヤ。著者が5人も(×o×) フシギですごい(・∀・`;)