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古本オモシロガリズム

満洲の沃野に読書はあったか(2):満洲開拓読書協会の顛末

きのう書きかけの東田平治さん自身のことはまた書くとして(^-^;)
東田さんがひっぱり出された「満洲開拓読書協会」って団体について調べてみた。

なんだ『図雑』にあったよ

なんてことはない,どこにでもある『図書館雑誌』に詳しい記事がたくさんあったよo(^-^)o
中田邦造「国民読書運動の国策参加への第一歩:財団法人満洲開拓読書協会の設立を見て」『図書館雑誌』(昭和18年11月12月合併号)
この記事は,1)設立に至るまでの経緯説明,2)役員名簿,3)発会式での経過報告(専務理事・中田邦造),4)発会式での挨拶(理事長・藤井崇治),5)設立趣意書,6)寄付行為,7)満洲側財団の定款(参考)の7つの部分からなるもの。これでこの不思議な協会の(制度的な)すべてがわかる!

中田邦造の「国民図書群」

ここで中田が標題にかかげる「国民読書運動」ってのは,中田イズムの読書運動のこと。「国民図書群」と名づけた推薦図書のリスト*1をたよりに読書すれば小卒でも中卒並になれる,というスグレもの。対米戦争前から石川県で中田が展開していた。
中田はいう。これまでこの運動は注目されてはいたが,全国化してくれるような政治家行政官がいなかった。けれども「今回図らずも国民読書の方法が取上げられて,二つの方面において大きく政治的に活かされようとしてゐることは実に欣快の至りである。」
ひとつは大政翼賛会の中央読書委員会だけれど,これはまだ計画中。もうひとつが満洲国の開拓移民国策に資せんとするもの。「共に大政翼賛会の藤井(崇治)国民運動局長の尽力に依ってゐる」といふ。藤井崇治は郵政官僚で戦時中に電力官僚に転進。ここに詳しい履歴があるんだけど… なぜだか昭和17年から20年のとこがすっぽ抜けているね (・∀・)  なぜかな〜 ぜんぜんわかりません。

ほやや〜 ポンと15万円,さすが甘粕の親友

で,おカネを出したのが満州国。「直接には(満洲国)総務庁の古海(忠之)次長の配慮」だそうな。この古海忠之って人は甘粕の親友。
中田が大政翼賛会や大東亜省,満洲国の連中をまきこんで創ったのが「満洲開拓読書協会」というわけ。

満洲開拓読書協会沿革(年表式に)

1930s? 先行事例:慰問袋に娯楽図書,「一燈文庫運動」(外務省),満洲図書館協会の寄贈運動
1940/41頃? 中田,いろいろ考える
1941.Fall 中田,渡満(1)
1942.9 「当初の趣意書」「寄付行為案」(発起人(5人,後の理事)による)
1942.末 中田,渡満(2)
1943.3 満洲国より理事組織変更の申し入れ
    → 「種々折衝」→日満別個に財団
1943.6.15 満洲側財団 趣意書発表
1943.7.15 日本側財団 大綱決定(発起人会による)
1943.9 満洲側財団 誕生 理事長:五十子巻三(開発総局長)(新京:開拓総局内)
1943.9.26 日本側財団 設立認可(大東亜省)
1943.9.末 満洲総務庁より金15万円→日満双方で 古海忠之(次長)の配慮
1943.10.1 満洲側財団 発会式
1943.10.29 日本側財団 登記完了
1943.11.1 日本側財団 業務開始(予定)(東京:満洲書籍株式会社内)

日満財団の役割分担

(かきかけ

2014.1.6追記

藤井ソウジの履歴だけど、今見たら上記のリンク先に昭和17年から20年に翼賛会にいたという条が追加されとるね。また、いまインターネットアーカイブでみたら、2007年段階ではなかったから、やっぱり、わちきの上記の記述をみて、足したのかなぁ。。。

*1:『図書館用語辞典』1982の定義