書物蔵

古本オモシロガリズム

気分をかえて,弥吉本を紹介

このまえの掘り出し。弥吉, 光長(1900-1996)<ヤヨシ, ミツナガ>さん。
わては会った(見た)ことないけど,戦前派の図書館業界の大立者。
満洲国の国立中央図書館に参画するなどし,戦後も活躍,執筆活動も旺盛で,日外アソシエーツ(図書館関連の出版社)から著作集もでた。
で。
この前,神田で数万買ったうちのほとんどがもとこの人のものだったんだけど,まず紹介するのは,これ。
図書の解題 / 弥吉光長執筆 ; 全国学図書館協議会編. -- 明治図書, 1953. -- (学校図書館学講座)
この本,ある場所(秘密)である個人文庫(極秘)をブラウジングしてたら見つけた。で,ほしーナァと思っていたら数日してご本人の架蔵本が手に入るとは(^-^*)
はい,web-cat(国立大の連合目録)じゃあ,どこぞのデータのマネしてNDCを017(学校図書館)にしてるところが多いけど,実は,この本の主題は,010.31(図書館本の書誌)なのだ。知らんかた。図書館の目録データは,信頼しきってはならぬと肝に銘ずべきなのですな。
この本,ただの書誌じゃなくて,解題書誌(annoted bibliography)ね(^-^)
これが重要。
OPACの発達で,ただの書誌(紙の)の存在価値は下がるばかり… でも,解題書誌は不滅です(この点については谷沢永一と同意見なのだ)!
大立者が,当時の図書館本にいちいち解題をつけている… それだけでも図書館言説史オタクのわちきにはアリガタイのに,それだけでない!
いちいち文句をつけているのだ!
それぞれの本にかならず,ここがよろしからずと。
まずもって,日本人の言説空間というものは世間にすぎないから,欠点を欠点ということができない。ダメなものはダメって言えない。
けど,当否は別として,弥吉さんは言ってますですねぇ。そこがすごい,というか使える。
例えば,私が今まで読んだ中で一番好きな図書館本(岡田温『図書館』2005-02-26 参照)についてはこんな具合

(内容要約の後で)平明でわかり易く一通りなんでも挙げてあるが,理想が高すぎるためか中小図書館の認識に欠ける処がある。中学以上の生徒に図書館の知識を与えるによい図書である(下線は引用者)

個人的には今までの図書館本でいちばんよくできていると思うのだけど。とくに理想も現実認識もない昨今の図書館員に図書館の知識を与えるにもよい図書である,と思うぞ。
けどそんな本にしてけっこうなツッコミですからねぇ…… オモシロいよ。
たとえば植村長三郎の『図書・図書館事典』については

(略)便利な図書である。尤も解説の仕方が適切でないものも見受けられ,東洋書誌学には解釈のちがいもあり,図書館界の近況に通じていないためか,若干の欠点がある。しかし,多くの参考書を読破してこれだけの対置を編した著者の苦心認める。(下線はまたも引用者(^-^*))

偉そうすぎっ! って,偉いのか(^-^;)