この業界用語は今もつづく立ち読みのことで、大正末期の円本以前に、銀座の有力書店が立ち読みを禁じたことから始まる。定価販売と省労力の対策には店番店員を減らして立ち読み追放しかないと、店主が自ら立ち読み族に叩きをかけて追い払った。追われた彼らはその報復に大挙して店番の少ない店を襲い万引きの手段に訴えたのである。書店はそのために潰れてしまった。
立ち読みを「盗み読み」と言って叩きをかけて追い払った大正の書店主といまの立ち読み歓迎の書店を比べて今昔の感にたえない。
(不昧堂事件)
- 松本昇平『出版販売用語の始まり』(ビー・エヌ・エヌ、1992.3)の「ぬすみ読み」の項。