書物蔵

古本オモシロガリズム

『読書と日本人』

次の本を読了。
もともと津野氏自身が、学者がやってくれないので代わりにやる、というもので、日本人の読書史を古代から現代まで述べるというざっくりしたもの。

読書と日本人 (岩波新書)

読書と日本人 (岩波新書)

古代から江戸期と、近代も一緒なのがちょっと無理があるような気がしたが、個人的には勉強になるところがあった。それは戦前の東京市立図書館が、結構、都市下層民の読書開拓に成功―少なくともとっかかりは成功―していたらしいこと。
他の部分は基本、学者先生たちの著書を参照しているんだけど、この、戦前下層民の読書の部分は直接当時の資料を見て書いている。

この国にはしっかりした読書史がない。それは事実でしょう。しかし〜ロジェ・シャルチエやロバート・ダーントンを中心に、ニ十世紀中盤にはじまった国際的な「書物史運動」や「読者研究」のたかまりもあって、日本でも各時代ごとの個別研究が着々とすすんでいます。私もこの本で西郷信綱前田愛三田村雅子や鈴木俊幸や永嶺重敏にいたる方々の仕事に繰りかえし助けていただいた。p270