書物蔵

古本オモシロガリズム

帝国図書館が満員になり始めたのは、1907年前後から

昨日、蔵書印さんにおそはったネット上の転載。

帝国図書館問題
     (今は特別閲覧室と特許券の手続に就て)

 帝国図書館の満員続きは昨今始まつた事ではない遠く大正の初年若くは明治四十年前後からの現象であつたと記憶してゐる。特に震災後は一層酷い状態であるらしい。四五年前迄は日比谷図書館抔はいつでも這入れたものであつたが、昨今はそれすら大入満員続きであるとの事、国家文教の為め、好学風を為すとは結構なことで、何を措いても図書館万歳を叫ばざるを得ない。
 論より証拠最近東朝『鉄箒欄』の報ずる所に拠れば、

上野でも日比谷でも、入館しやうと思へば門前に一時間以上の番号札を握つて立つことを覚悟せねばならぬ。若し日曜や祭日に行かうものなら、三時間以上は何うしても待つ。筆者は最近の日曜に上野図書舘で午前十一時から午後三時半まで待つて遂に入館出来ずに帰宅した。外国の何処でも見られぬ珍現象である。結局収容力が足らぬためであるから、何とか拡張の方法を執つて貰ひたい。又その拡張の出来る迄応急処置として、待合室を設くる必要がある。其寒空に屋外に立つて数時間を待つことは何といつてもひどい。いつの何時でも屋外に待つてゐる数十人に対して二三のべンチはあゐが、そのあるのは大抵番号呼込の聞えない所で、こんな所に腰かけて待つて居たら永久に入れない。

『書物往来』第三年第二号(通巻第十六冊)(大正15年2月8日)