書物蔵

古本オモシロガリズム

回覧業は改めさせ図書館的使命を持たせるべき

田代金宣(内閣情報局情報官)が昭和16年にオモシロいことを言っている。
田代は「出版新体制」下における小売商の組合加入について触れているのだが、本業でない小売店、つまり、「子供絵本」を扱う「玩具屋」「文房具屋」、「楽譜を扱う者」を組合から排除すると失業問題が生じるから入れるべきだと指摘し、さらに、その他の一環として、雑誌回覧業についてこういう。

又回覧業者は従来之を排撃してゐたが、これからの新体制の時代に於てはよき意味の回覧業は否定すべきものでなく、従来の回覧業を新体制に応ずるやう改め、小売商と利害が反しないよう改めさせ、進んでは図書館的使命を持たせるといふ具合にすべきである。
田代金宣「小売業者とその組合」『日配通信』(1) p.3-4(1941.7)

出版新体制のもとでは、回覧業を改めさせ、「図書館的使命」を持たせるという主張はなかなかに先見の明Σ(゜∀゜;) 
ってか、戦後、日本公共図書館無料貸本屋路線で大成功したのぢゃった(*´д`)ノ
ん?(・ω・。) 逆ぢゃんか、ってか(^-^;)

回覧業者を排撃!とは(。´・ω・)?

「回覧業者は従来之を排撃」といふのは、これですな(´∀` )

  • 聖代の奇怪事:雑誌回覧業者に対する東京雑誌販売業組合幹事の暴虐なる処置を見よ / 稲井治作 同発行 1922年  帝国図受入印:大正11.8.2寄贈 東京雑誌会寄贈本と記入

といっても、これは排撃された側がだした反論の代謄写パンフレット

三万の読書家と五百〔万?〕の苦学者とを代表して天下の志士仁人に愬ふ

東京雑誌販売業組合が、おカネだされても、回覧業者に雑誌を売るな、という規約をつくったことにむちゃくちゃ怒っとる(@_@;)

聖代の奇怪事

とはとは(σ^〜^)

東京雑誌販売業組合幹事の暴虐なる処置を見よ

このパンフによれば、
「雑誌の本質が智識の普及、思想の善導、趣味の涵養、生活の改善等を目的」とするのに、「単に営利の道具として之を悪用する発行者並びに販売者」がいると批判。いまでいえば、エルゼビア社みたいなワルモノですな。しかるに。。。

回覧業は取りも直さず此極端なる営利的傾向を抑止若しは調節する機関として意義あるもので、若し料金の徴収を不可とするならば、大小公私の図書館も亦世の非難を免れまい。

回覧業は知識を独り占めにしちゃふエルゼビア社もどきが生じないように社会的意義があるものだし、もしその回覧業が閲覧料をとるべきでない、というのなら、おなじく閲覧料をとっている図書館に文句があってしかるべき。なぜ回覧業だけ非難されねばならんの、という理屈(σ^〜^)σ

吾人の観る所を以てすれば、経営に多少の差異こそあれ、其目的使命に至っては、回覧業も図書館も全く同一であって、回覧行は所謂はゞ一種の民営巡回図書館であると断言して憚らないのである。聞くが如くんば、欧米各国に於いては、回覧業の発達頗る著く、盛に自働車を以て配本し、多数の図書館と相俟って、一般読書家に多大の便宜を与えつゝあるといふ。

ここでは回覧業も図書館も、ともに「目的使命に至っては、回覧業も図書館も全く同一」ということで、

図書館には公共性があるでしょ、だったら回覧業にも公共性があるんよ

という図式にもちこもうとしている。
それに当時は図書館も閲覧料をとっていたから、ますます回覧業と図書館の違いがわからんということになっていたわけである。
ってか、こんなオモシロげなパンフが金沢文圃閣から復刻されとったとは知らなんだ。。。( ・ o ・ ;)
著者・発行者はつぎの人だと巻末にある。

雑誌回覧会有志代表者東京雑誌会主 稲井治作 本郷区弥生町三番地

国会のデジデジに「インターネット公開(保護期間満了)」とあるから、著作者の没年を確認したということらしいけど、どこに情報があったのかしら。。。奇怪至極なり(*´д`)ノ