書物蔵

古本オモシロガリズム

地図出版の戦後史:昭文社を中心に

いま、これを買って分析中なのだが、この本の記述を解釈するのに補助的に役立つ文献を見つけた(って著者名から検索)。かように図書及び図書館は調べ物へとつながるのだな。。。

  • 黒田敏夫 著. 全てがゼロ、だから成功する :. 講談社, 2005.4. 237p ; ISBN 4-06-212191-3 :

全てがゼロ、だから成功する―地図王への道

全てがゼロ、だから成功する―地図王への道

いろいろ面白いことが書いてある。

1980sの道路地図の出版部数

昭文社、「MAPPLE」:大判の先駆け、社の顔に(あの商品は今)」『日経産業新聞』(2012.1.17)p.9ページによれば、道路地図「マップル」(1984〜)の部数はすごかったらしい。

Mappleはマイカーの普及によって大ヒットし、発売2〜3年目には1カ月5万部が売れた。

1年でなく1ヶ月で5万とは。。。( ・ o ・ ;) 1年で60万部(+o+)

地図業界で上場は昭文社とゼンリン

これも知らんかった(@_@;)

地図業界で株式市場に上場しているのは昭文社とゼンリンの二社。道路地図がベースの昭文社と業務用の住宅地図のゼンリンはすみ分けてきたが、カーナビゲーション向けなど電子地図の分野は競合が激化していて、昭文社は追う立場だ。

「地図は情報の塊(4)昭文社最高顧問黒田敏夫氏(人間発見)終」『日本経済新聞』(2005/11/25夕) 5ページ

地図出版の割拠時代(〜1960s)

なんで最初に本社を大阪においたのか疑問だったのだけれど、

社会に出て十年目の一九六〇年に独立して昭文社を設立。本社を競争の激しい東京を避けて大阪に置いた。
(「地図は情報の塊(3)昭文社最高顧問黒田敏夫氏(人間発見)」『日本経済新聞』(2005.11.24夕)p.7)

これでわかった(゚∀゚ )アヒャ 
あと、わざわざ大阪というのは、当時、民間地図出版業界が、割拠状態であったからというのもあるらしい。攻略しやすいところから攻略して地歩を固めるということかしら(゜〜゜ )

会社設立の際に決意したことは全国展開すること、企業や官公庁向けではなく、一般の人の使い勝手のよい地図を書店で販売することでした。当時も全国の主要都市に地図会社がありましたが、それぞれの地域に割拠して、全国展開する会社はありませんでした。

わらぢ屋(大阪)、アルプス社(名古屋)といった、準大手が割拠してたわけだねぇ。。。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%83%A9%E3%83%82%E3%83%A4%E5%87%BA%E7%89%88
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%97%E3%82%B9%E7%A4%BE
ゼンリンさんも、たしか北九州から全国制覇へ向かったんだった(*゜-゜)
昭文社さんがオモシロなのは、取次に頼らなかったところ。

営業マン時代にビルを探すのに苦労したことから、書店向け地図を作れば売れると確信していました。ただ、返品が多いので取次依存ではだめだと考え、書店の一店一店を直接社員が回り、「入り口近くの目立つところに地図コーナーを」と頼みました。同時に品ぞろえを豊富にする必要もありました。

地図コーナーの起源は?

この「書店の地図コーナー」というのも、その起源を明らかにせねばならんね。意外と、昭文社さんが「「〜地図コーナーを」と頼」んだのが起源だったりして(σ・∀・)σ
ん?(・ω・。) さういへば、明治からある「地形図」は形態からいって、最初から別置(べっち)かぁ(・∀・`;)
ただ地形図の販売方式ってーのも、あいまいなままなんだよね。ってかたしか官報販売所だか、専門の販売所だかあったような憶えが(もちろん、読んだ憶えね(σ・∀・)
八重洲ブックセンターの地下地図コーナーにあるように、地形図はかなり大型のカーデックスもどきを据え付ける必要があるから中小の書店では売れない???
書店の絵本スタンドと同様に、この資料形態(ないしニーズ)によるセグメント化というのは書店販売史の重要な要素だよ(。・_・。)ノ
柴野先生が図書館情報学から概念を借りて、閉架⇔開架、といった分析枠組みで「座売り」を説明してたのは、なーるほどと思ったことでした。ま、これは、「開架」における排列の話なんだけど。

なつかしの「ぬけみち道路地図」

交通渋滞対応の「ぬけ道」シリーズを出す際はタクシー会社と契約して全運転手に面接して聞き取り調査しました。

なつかすぃー(´∀` )

  • 東京・関東.渋滞・ぬけみち道路地図. -- 東京 : 昭文社, 1986.4. -- 143p ; 26cm.

これが初版?
ってか、愛用させてもらったですよo(^-^)o
生活道路にジモティー以外が入りこむな、というクレームで出なくなったのかしら?
いずれにせよ、なお考究すへし!`・ω・´)oシャキーン

追記(2013.4.22)地図出版の1940年体制は2000年に終焉した?

森さんからのメールにこんなんあった。

 日本地圖株式会社改め日地出版については、ウェブ檢索すると、ゼンリンに
2000年吸收されたとか。
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BC%E3%83%B3%E3%83%AA%E3%83%B3
 半世紀以上續いた老舖の會社だったんですね。知りませなんだ。
 下記ページで「道路地図」の表紙を見ると、おお、何だか見憶えあるやうな。
 http://www.map-nck.jp/history/history02.html

実際のところ、昭文社だけでなくゼンリンも、各県、各ブロックごとに戦国大名のように制覇して全国展開にもっていったのであって、統制会社を起源とするニッチ出版がゼンリンに吸収された2000年は、民間地図出版史の1940年体制が終了した年だったといへるのでは(*´д`)ノ
って、かやうなる見立てはまだだれもしてないけどね(*^-')b
ああ、黒岩さんに聞かせたかったなぁ。学問はなりがたく人の命はみじかい。アルスロンガ、ウィータブレウィスぢゃのぅ(*゜-゜)