書物蔵

古本オモシロガリズム

未見だった論文を読む

  • 牛垣雄矢「昭和期における大縮尺地図としての火災保険特殊地図の特色とその利用」『歴史地理学』47(5) pp.1-16 (2005.12)

いやサ、わちきが火保図を調べた直後に火保図を使った地理学文献が立て続いたのも皮肉な話ぢゃ(゜〜゜ )
これは歴史地理の論文なので、単に火保図の資料紹介(歴史)だけでなく、神楽坂地区の町並み復元作業と2本柱で論文になっとる。町並み復元のほうを見ると、去年だったかオニャノコに誘はれていった超オシャレ和風料亭なんかもトレースされとるね(^-^;)
と、それは余談で(。・_・。)ノ
わちきのキョーミがある火保図史のほうを見ると、さかんに都市整図社さんにヒアリングしとる(2004.9、2004.12、2005.3、2005.4)のと、書誌が明記されとらんが「同社保有の資料」を情報源にしたとある。
また、沼尻火保図についてハ、都立にヒアリングし(2005.3)、都立所蔵(のコピー本)と都市整図社所蔵(の都内)分はイコールであると書いてある。
ただ記載内容を見ると、都市整図社の資料ではわからなかったのか、沼尻経営会社の改称・転居について書いてなかったり、井沢(1999)を参照しなかったっぽい。また、朝日新聞(1982)も見つからなかったよう。さらにわちき同様、玉木(1954)を見落としとるの(σ^〜^) 昭和29年からいちばんアクセスしやすかったはずの玉木(1954)がわちき(2011)まで参照されんかったというのもオモシロぢゃ(゚∀゚ )アヒャ
それから、「火災保険特殊地図」という用語を使うのはいかがであろう。これは沼尻長治さんが、そう呼びたいといっていたもので、保険業界的には「火災保険地図」が定番。実際、古い保険用語集ではそのように立項されとる。まあ、1982年よりこのかた、沼尻火保図のことしか記事にならんかったからしょうがないといえばしょうがないんだけど。
じつは歴史のほうで一番問題なのは沼尻火保図の図化対象都市のところである。わちきの調べた諸文献(って全部挙げてある)によれば、かような一部だけに収まらない。本土だけでなく外地、ともすると外邦の都市を図化したとある。これは都市整図社に今ある地図から考えたせいですな。
あと東京以外の地方都市についての分は、科研費報告書でしか出なかった次の地図総目録にある分しかないとあるが、いやいや、調べ方によってはもっとでたはず。ヒントはとしせいずしゃ。

  • 近代日本の大縮尺都市図に関する基礎的研究 / 研究代表者山田誠. -- [山田誠], 2005. -- (科学研究費補助金(基盤研究(B)(2))研究成果報告書 ; 平成13〜16年度)

やはり、late1980s-1990sの火保図研究のことをもっと調べねばならんね。
ということで地図史、資料論としてはまだわちきの見取り図以上のものがないとわかったのであった(*゜-゜)