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古本オモシロガリズム

日本における火災保険地図 関連文献年表(改訂版)

注:[米][英]はそれぞれ米国、英国での出来事
 太字はわちきが入れた時代区分もどき
 年代からはじまっとる項目は参考事項かわちきの見方
 ( )内は著者名+刊行年など典拠情報
 ※はわちきの注記
 火災保険地図/火災保険図は「火保図」と略す

  • 前史
  • 1666 [英]ロンドン大火(伊東2006)
  • 1680 [英]フェニックス火災保険会社(Phoenix fire insurance company)近代最初の火災保険業(伊東2006)
  • 1792-1798 [英]リチャード・ホーウッド(Richard Horwood)フェ社のためロンドン火保図を作成(伊東2006)
  • 1860s [米]米国で火保図がつくられる(矢守1975)
  • late19c [米][英]Sanborn社(米)、Charles Goad社(英)が火保図を作成(伊東2006)
  • 大正期
  • 1917 大日本聯合火災保険協会 設立(ネット情報)
  • 大正期 損害保険会社、海外火保図を模倣し、火保図をつくりはじめる 例)東京火災では1/600(玉木1954)
  • 大正期 国内最初期の火災保険地図(日経金融2004)
  • 昭和前期
  • 昭和初期 火保図作製会社が複数設立さる 例)「火保資料調査株式会社」村井栄一 (玉木1954)
  • 1927 火災保険協会が「京都明細図」(火保図)を作る(1951年頃まで改訂を続ける)(京都新聞2010)
  • 1928 大阪で「地籍社」創業。 桑原, 蓼軒 (1893-)‖クワバラ,リョウケンが火保図作成に従事(桑原『日本最初の公開図書館芸亭院』1962奥付)
  • 1928.3.1 沼尻長治、「地図研究所」(渋谷区代官山町)を創立
  • 1930s? 玉木、チューリヒでスイス再保険会社に東京の火保図が所蔵されているのも現認(玉木1954)
  • 1933.1-1933.10 沼尻、台湾の10都市を「現場調査」(井沢1999)
  • 火保資料調査株式会社 月刊誌『火保資料』1(1)1935 - 3(7)1937? を出す
  • このころ? 損保会社図面係で研究会? 篠原三郎(大阪海上) 中根要(豊国火災) 青山伊久三(日本火災) 小宮鉄次(扶桑海上) 高田政敏(東京海上)(玉木1954)
  • 1939.1 地図研究所、港区麻布霞町に移転。「東洋都市測量製図社」と改称(井沢1999)
  • 1941.12 日米戦開始。火災保険と戦争保険の合体などで火保図が不要に(玉木1954)
  • 1941.12 開戦後まもなく、損保会社の火保図憲兵隊による押収or廃棄命令(玉木1954)
  • 1942 火災保険協会は日本損害保険協会(旧)に統合(ネット情報)
  • 1943 協会が損害保険統制会に(ネット情報)
  • 1944 沼尻、憲兵隊による検閲や没収を受ける、「戦時改描」もどきの指示(井沢1999) 没収はリヤカー2台分の原図(牛垣2005)
  • 1945 WW2終戦
  • 火保図のニーズ、部分的or一時的に復活?
  • 損害保険協会「料率算定会」で火保図もどきを作った(一回かぎり)(玉木1954)
  • 1950s [米][英]このころまで英米火保図は現用(伊東2006)
  • 1951.1.17 東洋都市測量製図社の業務を引き継ぎ、「日本火保図株式会社」設立。(井沢1999)
  • 1951 このころ京都の火保図(大日本聯合火災保険協会のもの)最後の改訂
  • 玉木一介「火災保険図(損保今昔物語の内)」『保険界』7(5) p.28-29,20 (1954.5) ※業界人による国内火保図の回顧。初の歴史的記述。火保図を過去のものとして言及。戦前か戦後の火保図がこの時点で社内に残っていることを暗示。
  • 1955ころ? 火保図の戦後のニーズもなくなる
  • 1956.9 日本火保図株式会社を発展的解消、「都市整図社」を設立。(井沢1999)
  • 1960s [米][英]これ以降、英米火保図は非現用に それでも英では1970sまで米では1990sまで作成される(伊東2006)
  • 保険辞典. 上巻 / 横尾登米雄. -- 保険研究所, 1961 ※p.114に「火災保険図」の項「戦前は、わが国の保険事業の規模等から、きめの細かい作業を必要とする関係で、業界全体の要請にこたえる専門業者があって、統一的な考え方で、一定区分に従った詳細な番地入り地図を作成し、利用に供していた。」
  • 1960s 明治百年ブームによる古書ブーム、古地図にも。ただし前近代の地図がメインhttp://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20051112
  • 1970.8 都市整図社、地図販売店を開店。一般地図の販売とコピーサービス
  • 都市図の歴史. 世界編 / 矢守一彦. -- 講談社, 1975 ※サンボーン保険地図の紹介(数行のみ)
  • 火保図の再発見
  • 1981.11 千代田図書館が沼尻地図を知り、コピーを依頼。沼尻氏に区が感謝状(朝日1982) ※千代田の当時の担当は鈴木理生氏ではなかろうか
  • 「貴重な住宅地図,数千枚寄贈 製図会社社長が都内の図書館に戦前戦後の「街」一目で」『朝日新聞』1982.9.23  p.20 ※約3000枚。「大半は都内のものだが、地方都市や戦前の台湾、サハリン(当時の樺太)もある」という「「戦前の台湾、サハリンの住宅地図はこれ以外ないだろう」(千代田図書館)など関係者は喜びに包まれている」とも沼尻火保図について最も詳細な文献
  • 千代田図書館書図火災保険図目録:沼尻長治氏寄贈地図一覧』(千代田区千代田図書館 1982 ※大串(1991)による 所蔵先不明だが都立にある?
  • 京橋図書館所蔵火災保険図目録:沼尻長治氏寄贈地図一覧』中央区京橋図書館郷土資料室編 同室 1983 14p 所蔵:京橋図書館 ※ちょっとフシギな序文あり。江戸博(1994)の文章が酷似
  • 『不明(火保図の目録)』台東区立?図書館? 時期不明 ※大串(1991)による「千代田・中央区と同様のものが台東区立台東図書館でも作成されている」
  • British fire insurance plans / Rowley, Gwyn. -- C.E. Goad, 1984 ※英国火保図の概説書。国内所蔵先見当たらず
  • 1985 このころ、沼尻長治「秘伝夢之地図」を出版を計画か?(井沢1999) ※所蔵先不明。出版されなかった???
  • 散発的な部分利用:火保図の利用・研究すすまず? なぜ?
  • 1990ごろ 京都府庁の倉庫から府立資料館へ「京都明細図」移管さる
  • 『江戸・東京学研究文献案内』大串夏身 青弓社 1991 ※p.48に火保図が立項。千代田区立(1982)、中央区立(1983)に加え、台東区立も火保図の目録を出したとあるが、肝心の台東区立の書誌の記載がない!
  • 中央区沿革図集. 月島篇 / 東京都中央区京橋図書館. -- 東京都中央区京橋図書館, 1994.3 ※火保図凡例あり
  • ヤミ市模型の調査と展示 / ヤミ市調査団他企画・執筆 ; 東京都江戸東京博物館編集. -- 東京都江戸東京博物館, 1994. -- (東京都江戸東京博物館調査報告書 ; 第2集 . 常設展示製作に伴う調査報告 2 (大型模型 2) ; 2) ※「註 5 火災保険特殊地図は、株式会社都市整図社社長,沼尻長治氏の御厚意により寄贈を受けた現在は、「資料現地所蔵主義」の原則により、東京都の各市区でも該当する地図を保管している。」とある。<「資料現地所蔵主義」の原則>ってなんだろ( ・ o ・ ;) んなことば図書館学にはないのでは
  • 神田まちなみ沿革図集 / Kandaルネッサンス出版部. -- 久保工務店, 1996.9 ※鈴木理生氏、火保図を使用
  • Fire insurance maps : their history and applications / Diane L. Oswald ; pbk.. -- Lacewing Press, 1997 ※米国火保図の概説書。国内所蔵先見当たらず
  • 井沢龍暢「沼尻長治の火災保険地図について」『災害の研究』30 p.49-56 (1999)※出所不明の資料、「〔都市整図社〕営業履歴書」、「「秘伝夢之地図」について」(沼尻長治1985.1)の2つがついている後者には火保図の作成法もあり。文体が独特だが、沼尻火保図の歴史について重要な文献。
  • 海外火保図が地理学へ応用され始める
  • 藤井正「新旧都市空間の形成と変化:アトランタ大都市圏の多角化を事例に」『地図と歴史空間』足利健亮先生追悼論文集編纂委員会 大明堂, 2000.8 ※サンボーンの火保図(1931)を1990年代と比較。火保図を用いた「数少ない研究事例」(寺阪2002)
  • 2001.8 ある人が目黒区の郷土資料館で火保図を閲覧。 www.ne.jp/asahi/tetsudo/miyata/yodan/yutenji/page01-p.html ※区立図書館から郷土資料館に移管が進んでいた?
  • 松島茂「空襲体験と図書館」『図書館雑誌』97(8) p.513-515(2003.8) ※「最近では戦災前後の地図の照会があったらまず火保図がどの職員の頭にも浮かぶ。それほど利用は頻繁にある。しかし、まささほど一般に知られていないことは残念だ」 沼尻を池尻に、都市整図社を製図と間違えて表記している。沼尻火保図に関する知識が薄れた? 火保図についてはあまり記述がない。
  • 火災保険図によるイスタンブル商業地域の景観変遷 / 寺阪 昭信. -- (西南アジア研究 (56), 22-44, 2002 ※「〔火保図は〕従来の都市研究にほとんど利用されてこなかった」(p,24)
  • 商業的ニーズが出現
  • 2003 土壌汚染対策法が施行。これがきっかけで工場跡地などで土壌汚染問題が表面化。土地の使用履歴(地歴)を文献調査するニーズが全国で急速に増大
  • 「明日を拓く(中)東京海上日動/トップ率先、本業で勝負(動き出す金融CSR)」『日経金融新聞』(2004/12/29) 3ページ ※地歴調査の新ビジネスについて。別系統の火保図現存か?
  • 2005 国会図書館による所蔵資料の紹介HPできる ※土井正造著『〔鎌倉市火災保険図〕』1:1,000 横浜 横浜火災保険図協会 1942.7 青写真 31×42cm 27枚などが紹介さる
  • 牛垣雄矢「昭和期における大縮尺地図としての火災保険特殊地図の特色とその利用」『歴史地理学』47(5) pp.1-16 (2005.12)
  • 伊東理「サンボーンの都市の『火災保険地図』(虫ぼし抄)」『関西大学図書館フォーラム』 (11) pp.30-34 (2006) ※ネット上にあり。英米火保図の概説史。マイクロ版サンボーン火保図の読み解き。
  • 河原典史「資料調査--火災保険地図の歴史地理学的活用 (プロジェクト 日本人の国際移動研究会 2006年度研究経過報告)」『立命館言語文化研究』18(4) p.145-147 (2007.3)
  • 小鍛冶恵;布施孝志;清水英範;内田弦「都市史研究への火災保険特殊地図の応用可能性:戦前・戦後の東京の街並調査に向けて」『日本写真測量学会学術講演会発表論文集』(2006) p.47-50 (2006.11) ※火保図をPCに取り込み地形図上に補正して展開する試み
  • 「戦前戦後の京くっきり 地図291枚、府立資料館で発見」『京都新聞』(2010.12.16) http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20101216000092 ※「京都市明細図」291枚発見。「大日本聯合火災保険協会」作成のもの。厚紙286枚(縦40×横55cm)縮尺1200分の1